伸展葬

伸展葬（しんてんそう）

伸展葬（しんてんそう、英語：extended burial）は、文化人類学や考古学の分野において用いられる専門用語であり、故人の遺体を体全体をまっすぐ伸ばした姿勢で埋葬する様式、またはその行為そのものを指し示します。

この用語が用いられる主な目的は、対照的な埋葬形態である屈葬（くっそう）との区別を明確にすることにあります。屈葬とは、遺体を折り曲げた姿勢、例えば膝を抱え込んだり、手足を縮めたりした状態で埋葬する方法です。これに対し、伸展葬は遺体を自然な、あるいは意図的に伸ばされた姿勢で安置する点を特徴としています。

伸展葬に含まれる具体的な姿勢にはいくつかのバリエーションが見られます。最も一般的なものとしては、遺体を仰向けにして横たえる仰臥伸展葬（ぎょうがしんてんそう）があります。また、非常に数は少ないものの、遺体をうつ伏せにして埋葬する俯臥（ふが）の姿勢も、体全体が伸ばされている場合には伸展葬の一種と見なされることがあります。腕の位置についても多様性があり、体の脇に沿って伸ばされている場合、腹部や胸の上に組んで置かれている場合など、様々な形態が確認されています。

文化人類学や考古学の研究者たちの間では、伸展葬という用語の定義とその研究における意義について、より深い議論がなされることがあります。単に遺体が発見された際の最終的な姿勢だけをもって伸展葬と分類するのではなく、埋葬行為全体のプロセスや、それに伴う文化的な意図を読み解く視点が重要視されているためです。具体的には、遺体を伸ばした姿勢のまま保つことを可能にする棺（ひつぎ）の使用や、遺体を特定の形状に整え、または固定するために用いられた包装の存在などが、伸展葬を意識した埋葬行為の明確な証拠と見なされることがあります。

このように、遺体を伸ばした姿勢で埋葬するという単なる物理的な状態だけでなく、そのような状態を実現するためにどのような準備や施設が用いられたのか、そしてそれがその時代の社会や文化においてどのような意味を持っていたのかを考察する上で、伸展葬という概念は重要な手がかりを提供します。屈葬との対比も含め、埋葬形態の研究は、過去の人々の死生観、社会構造、儀礼といった側面を理解するための貴重な情報源となっているのです。

参考文献として、水野清一氏と小林行雄氏によって編纂された『図解考古学辞典』（創元新社, 1959年）などが、この分野における基本的な知識を体系的に整理しています。

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