似島検疫所

似島検疫所の歴史と背景

概要

似島検疫所（にのしまけんえきしょ）は、広島県南区に位置する似島に設けられた施設で、1895年に設立されました。ここは、日清戦争帰還兵のための検疫を主な目的としており、戦後も厚生省管轄で機能していました。残念ながら、1958年にはその役割を終えましたが、その歴史は多岐にわたります。特に、この検疫所は戦時中の兵士や捕虜の医療だけでなく、文化交流の場としても重要でした。

設立の背景

日清戦争の勃発に伴い、広島市には多くの帰還兵が戻ってくることとなりました。伝染病が広がりつつあったため、広島市においても感染症に対する対策が強化されました。1895年、陸軍医務局長の石黒忠悳の提案で、似島に検疫所が設けられることが決まりました。これにより、帰還兵やその家族を感染症から守る取り組みが始まります。

検疫所の機能

似島検疫所は、最初は日本海軍の管轄下に置かれていましたが、次第に陸軍が主導権を握るようになりました。設立当初は、兵士の検疫のために設計された施設でしたが、日露戦争や第一次世界大戦に伴い、捕虜の収容も行われるようになりました。特に、ロシア人捕虜が最大で2391人収容されることから、文化的な交流の場ともなりました。

文化交流の歴史

特に第一次世界大戦時に、似島ではドイツ人捕虜が多く収容され、その中には当時の日本において文化的な影響を与えた人物も多数いました。カール・ユーハイムは、ここでバウムクーヘンの作り方を日本に紹介し、後に広島で製作即売が行われました。また、サッカーの国際試合の先駆けともいえる試合もここで行われ、地元の選手たちに多くの技術を教える機会ともなりました。

被爆者救護と戦後の役割

1945年8月6日の広島への原子爆弾投下後、似島検疫所は被爆者の救護に重要な役割を果たしました。多くの被爆者がここに運ばれ、仮設の医療施設として機能しました。似島には、たくさんの医療材料や器具が備蓄されており、当日は市内から直接搬送された負傷者が次々と運び込まれる事態となりました。この混乱の中、島の施設は瞬時にパンクし、救護所としての機能は数日で終わることとなりました。

閉鎖と遺構

1958年、似島検疫所は閉鎖されましたが、その遺構は今も残っています。現在、島では過去の文化や歴史を発信するため、観光地としての役割も果たしています。また、似島の文化や教育の場としての活用は続いており、地元の歴史や伝承を学ぶ場ともなっています。

似島の未来

似島には、かつての検疫所の遺構を活かしたさまざまな施設が存在し、訪れる人々に貴重な歴史を伝えています。文化交流や医療の歴史を知ることは、今の時代に生きる私たちにとっても重要です。さらに、地域の発展に寄与し続けるため、新たな活用方法が模索されている今日、このような歴史を踏まえた町づくりが期待されます。

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