但熊

但熊：年間4万人超が訪れる、兵庫の卵かけご飯専門店

兵庫県豊岡市但東町栗尾に位置する「但熊」は、株式会社西垣養鶏場が運営する卵かけご飯専門店です。2006年の開業以来、そのおいしさから人気を博し、年間4万人もの顧客を惹きつけています。単なる飲食店にとどまらず、地域農業との連携や六次産業化の先駆けとして、多角的な事業展開で成功を収めています。

但熊の歩み：養鶏場から地域活性化のシンボルへ

但東町は古くから養鶏が盛んな地域です。西垣源正氏は農業高校卒業後、家業である養鶏場に入社。1970年代には地元養鶏家と共にブランド卵「クリタマ」を共同出荷するなど、地域農業に貢献してきました。しかし、時代の流れとともに高齢化や養鶏場の廃業が相次ぎ、1995年には西垣養鶏場のみが残ることに。西垣氏は「クリタマ」の生産を続けながら、米作りも開始。多角的な経営を模索する中、卵の自動販売機の導入が事業拡大のきっかけとなりました。

1996年には地元農家と共に農産物直売所「百笑館」を設立。新鮮な野菜は好評でしたが、自家製の米の販売が伸び悩んでいました。そこで、島根県で流行していた卵かけご飯に着目。2006年、周囲の反対を押し切り、「但熊」をオープン。「安くて本当にうまい」という信念に基づき、卵かけご飯を中心とした定食を350円で提供しました。

当初は赤字続きでしたが、顧客からのフィードバックを活かし、卵のサイズ変更などの改善策を実施。開店半年後にはテレビで紹介され、そのおいしさや価格設定が話題となり、客足が殺到。卵かけご飯ブームも追い風となり、「但熊」は瞬く間に人気店となりました。「百笑館」の売り上げも4倍に増加するなど、地域経済への貢献も目覚ましいものがあります。

2010年には、西垣養鶏場の卵を使ったスイーツ専門店「但熊弐番館」もオープン。六次産業化の取り組みは全国モデルとして高く評価され、2011年には農林水産祭の畜産部門で天皇杯を受賞しました。2020年には西垣氏から娘婿への社長交代が行われ、西垣氏は地域環境整備に尽力。同年、旭日双光章を受章しました。

但熊の魅力：こだわりの素材とシンプルな美味しさ

但熊で使用される卵は、西垣養鶏場で育てられた「クリタマ」です。25種類の飼料、独自の飼育方法により、臭みの少ない高品質な卵を実現しています。米は但東町産「夢ごこち」を使用。鶏糞肥料による土壌改良で育てられた米は、粘り気があり、コシヒカリにも劣らないと評されています。

メニューは卵かけご飯定食が中心ですが、自由に卵を追加できるシステムや、醤油の種類、薬味など、客自身の好みに合わせてアレンジできるのも魅力の一つです。オムレツなどのサイドメニューも用意されています。

メディアへの登場と今後の展望

「但熊」は漫画や小説など、様々なメディアにも登場しています。高瀬志帆の漫画「おとりよせ王子 飯田好実」では、但熊の卵かけご飯セットが取り上げられ、森沢明夫の小説「ヒカルの卵」では、但熊がモデルとなっています。

「但熊」は、美味しい卵かけご飯を提供するだけでなく、地域活性化の象徴として、今後もその存在感を増していくことでしょう。 こだわりの素材と、シンプルながらも奥深い味わいは、多くの人々を魅了し続けています。

もう一度検索