佐々木克巳

佐々木克巳：中世ヨーロッパ史研究の第一人者

佐々木克巳氏（1931年10月2日-2013年8月15日）は、日本の西洋史研究において重要な役割を果たした中世ヨーロッパ史の専門家です。成蹊大学名誉教授として後進の育成にも尽力しました。

生涯と学問

東京で生まれた佐々木氏は、一橋大学大学院経済学研究科博士課程において、増田四郎氏の指導の下、歴史研究の基礎を築きました。その後、南山大学助教授、青山学院大学教授を経て、1972年より成蹊大学経済学部教授に就任。1998年に定年退職するまで、長年にわたり教育・研究活動に従事し、多くの学生を指導しました。

佐々木氏の専門は中世ヨーロッパ史、特にベルギーの歴史家アンリ・ピレンヌの研究で知られています。ピレンヌは、西ローマ帝国の崩壊後、フランク王国の成立から都市の成長、そして中世ヨーロッパの形成という歴史的過程を分析したことで有名です。佐々木氏は、ピレンヌの著作を数多く翻訳・紹介することで、日本の学界におけるピレンヌ研究の普及に大きく貢献しました。

研究業績

佐々木氏の業績は、ピレンヌ研究に留まりません。独自の視点から中世ヨーロッパ社会を深く考察し、数々の著作を発表しました。その著作は、日本の歴史研究に大きな影響を与え、現在でも高く評価されています。

主な著書・翻訳:

『歴史家アンリ・ピレンヌの生涯』: ピレンヌの人物像と学問的足跡を詳細に描いた評伝。
アンリ・ピレンヌ『ヨーロッパ世界の誕生 マホメットとシャルルマーニュ』 (共訳): ピレンヌの代表作の一つで、イスラム勢力の隆盛とカロリング朝成立がヨーロッパ世界形成に及ぼした影響を論じた名著。
アンリ・ピレンヌ『中世都市 社会経済史的試論』 (翻訳): 中世都市の成立と発展に関する経済史的な考察を収録。
『古代から中世へ ピレンヌ学説とその検討』: ピレンヌの学説を詳細に検討し、独自の解釈を加えた重要な研究書。
エーディト・エネン『ヨーロッパの中世都市』 (翻訳): エネンによる中世都市研究の重要な著作。
アンリ・ピレンヌ『中世都市論集』 (翻訳): ピレンヌの都市に関する論文をまとめた論文集。
アンリ・ピレンヌ『ヨーロッパの歴史 西ローマ帝国の解体から近代初頭まで』 (翻訳): ピレンヌによる広範なヨーロッパ史の概説。
エーディト・エネン『ヨーロッパ都市文化の創造』 (翻訳): エネンによる中世ヨーロッパ都市文化の研究。

これらの著書・翻訳を通して、佐々木氏は、中世ヨーロッパ史研究の深化に貢献しただけでなく、日本の読者にとって難解な歴史学の知見を分かりやすく伝えました。

受賞歴

2011年には、長年の功績が認められ、瑞宝中綬章を受賞しています。

没後

2013年8月15日、心筋梗塞のため81歳で逝去されました。佐々木氏の死は、日本の歴史学界に大きな損失をもたらしました。しかし、彼の残した研究業績は、今後も多くの研究者や学生たちにインスピレーションを与え続けることでしょう。彼の功績は、日本の西洋史研究、ひいては歴史学全体に多大な影響を与え続けています。

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