佐々木多門

佐々木多門：国際的な視野を持つ経済学者、ジャーナリスト

佐々木多門（1866年 - 1937年）は、明治から昭和初期にかけて活躍した日本の銀行家、経済学者、ジャーナリストです。東京帝国大学で経済学を修めた後、第二高等学校で教鞭を執り、その後、日本銀行に入行。高橋是清の知遇を得て、その私設顧問として長きにわたり活躍しました。また、イギリスの有力紙「タイムズ」の東京通信員として、国際的な視点から日本の政治経済を分析し、世界に発信しました。

学問と実務の両面で才能を発揮

佐々木は、東京帝国大学法科大学で経済学を学び、その専門知識と英語力を生かして、高橋是清に認められ日本銀行に入行しました。日銀では、調査局で「英語の総大将」として活躍し、日本経済に関する英文の著作を執筆。その著作は、英国紙「タイムズ」から「日本経済に関する最も有益かつ百科事典のような書物」と絶賛されました。また、高橋是清と床次竹二郎という二人の大物政治家の私設顧問を務め、その政策立案を支えました。

国際ジャーナリストとしての活躍

佐々木は、日本人として初めて海外主要紙の通信員となり、イギリスの有力紙「タイムズ」の東京通信員として、日本の政治、経済に関する論説記事を世界に発信しました。満州事変以降、国際世論が日本に対して厳しくなる中、佐々木は「タイムズ」紙上で日本の立場を主張し、国際社会に理解を求めました。また、国内の軍国主義勢力に対しては、痛烈な批判を加え、良識的な立場から日本の進むべき道を提言しました。

生涯

佐々木は、1866年に青森県で生まれました。上京後、独学で英語を習得し、東洋英和学校を経て、東京帝国大学に進学。卒業後は、教育者として同志社や奈良県尋常中学校、第二高等学校で教鞭をとりました。その後、日本銀行に入行し、高橋是清の右腕として活躍。1921年からは「タイムズ」の東京通信員として、ジャーナリストとしての活動を始めました。

佐々木は、1937年に72歳で亡くなるまで、日本の政治経済の発展と国際的な理解のために尽力しました。彼の執筆した論説は、国際社会に大きな影響を与え、その業績は今日でも高く評価されています。

年譜

1866年：陸奥国津軽郡（現：青森県東津軽郡平内町）に生まれる。
1884年：東洋英和学校に1期生として入学する。
1888年：東京帝国大学法科大学政治学科に入学する。
1892年：同志社で教鞭をとる。
1897年：第二高等学校で教鞭をとる。
1904年：日本銀行に入行する。
1915年：日本銀行から『The Recent Economic Development of Japan』を出版。
1921年：「タイムズ」の東京通信員となる。
1937年：死去。

人物像

佐々木は、その卓越した語学力と経済学の知識を持ち合わせ、国際的な視野を持った人物でした。特に、英文による論述能力は非常に高く、英国人文学者をして「秀逸」と言わしめたほどです。また、紅茶を愛し、「紅茶博士」という異名を持ち、その「紅茶哲学」は、経済界やキリスト教関係者の間で有名でした。

逸話

高橋是清は、佐々木の「タイムズ」への寄稿を楽しみにしており、掲載後には必ず感想を寄せていた。
佐々木は、反目し合う高橋是清と床次竹二郎の間を取り持とうと努力したが、床次の度重なる心変わりに苦労した。
高橋が海外の有力者に送った私的な手紙は、ほぼ佐々木が代筆していた。

著作

『経済学教科論』（1901年、翻訳）
『最近十年間に於ける経済学説』（1901年、翻訳）
『経済学派比較評論』（1907年）
『The Recent Economic Development of Japan』（1915年）
* 『日本銀行の沿革（英語版）』（1921年）

佐々木多門は、その学識と国際感覚を生かし、日本の発展に貢献した偉大な人物でした。

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