東洋英和学校

東洋英和学校（とうようえいわがっこう）は、1884年（明治17年）にカナダ・メソジスト教会の手によって、当時の東京府麻布鳥居坂13番地に創設された男子向けの各種学校です。

この学校の設立は、1873年に日本へ渡ったカナダ・メソジスト教会の宣教師G・コクラン博士と医療宣教師D・マクドナルドの熱意から始まりました。彼らは男子校設立のため、1883年に麻布東鳥居坂の土地取得を決めますが、当時外国人による直接の名義での土地所有や学校設立は認められていませんでした。そのため、「東洋英和学校会社」という組織を設立し、日本人である社長の小林光泰氏（日本のメソジスト派牧師）の名義で文部省へ出願するという方法が取られました。この際、同じく来日していた婦人宣教師マーサ・カートメルによる女子校設立のため、隣接する土地（14番地）の取得も助言されました。小林光泰氏のほか、平岩愃保、土屋彦六、浅川広湖といった日本のメソジスト派牧師たちが会社の運営に関わっています。

1884年3月には校舎と寄宿舎が完成し、G・コクランが初代校長に就任。同年10月15日、政府文部省からの正式な設置認可を得ました。同年11月には高等科と尋常科が開設され、学校は順調に発展。1886年（明治19年）には学生数が400名を超える規模となりました。また、この時期の1886年9月には神学科が設立され、麻布永坂町には幼童科も設けられています。1887年（明治20年）6月には平岩愃保牧師が2代目校長となりました。

しかし、明治時代の中盤から後半にかけて、日本の社会情勢は大きく変化します。初期の欧化への熱が冷め、国家主義的な傾向が強まる中で、ミッションスクールは次第に厳しい立場に置かれるようになりました。1899年（明治32年）に公布された私立学校令、それに続く文部省訓令一二号は、宗教教育を事実上制限する内容であり、ミッションスクールは第一高等学校などの上級学校への推薦制度の対象外とされるなど、不利な状況に立たされます。この頃には、東洋英和女学校で宗教弾圧とも思われる事件が発生するなど、社会的な圧力も感じられる状況でした。

このような背景の中、東洋英和学校は生徒募集に苦心し、経営が悪化していきます。学校が存続の危機に瀕した1893年（明治26年）、キリスト教信者であった江原素六が3代目校長に就任しました。江原校長は、学校を立て直すために、ミッションスクールとしての形態を改め、普通教育と上級学校への進学指導に重点を置く学校へと転換するという苦渋の決断を下します。学校の名前を変え、最終的には場所を移すことまで視野に入れた再建計画が進められました。その結果、1895年（明治28年）7月には、東洋英和学校の内部組織として尋常中学部が創設され、江原自身が初代部長となり、清水由松らとともに運営にあたりました。この尋常中学部は同年中に私立麻布尋常中学、1899年（明治32年）には麻布中学校と改称し、これが今日の麻布中学校・高等学校へと発展していくことになります。

一方、本元の東洋英和学校は、普通科が分離独立したことや経営難が解消されなかったことから、その歴史に幕を下ろすことになります。1900年（明治33年）3月には普通科が、続く1901年（明治34年）には神学科が閉鎖され、学校全体が閉校となりました。

短期間の存在ではありましたが、東洋英和学校は、明治期の日本の教育史において、またキリスト教宣教活動の歴史において、重要な役割を果たしました。その一翼を担った尋常中学部が、現在も名門校として続いている点は特筆されます。

主な出身者としては、原野彦太郎、高木壬太郎、波多野伝四郎、島津岬、畑英太郎、山路愛山などが知られています。

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