佐々木巌夫

佐々木巌夫：日本柔道界の巨星

生い立ちと柔道との出会い

佐々木巌夫は1907年12月3日、東京都世田谷区で生まれた。医師である父を持つ笠原家の五男として育ち、特に少年期を栃木県で過ごす中で、兄たちの影響を受けて柔道を始める。彼の家では、兄たちが柔道の稽古をする姿が日常の光景であった。その影響から、佐々木は早くから柔道が身近な存在になり、激しい練習に参加することで身体を鍛えていった。

旧制宇都宮中学校に入学した佐々木は、その後柔道教師から直接指導を受け、感化を受ける。1922年、14歳の時に講道館への入門が決まり、柔道の道を本格的に歩み始める。彼はすぐに才能を開花させ、同校の柔道部は近県大会で数々の優勝を果たす。特に1924年には全国中等学校大会で個人優勝し、その名を広めた。

早稲田大学での活躍

1925年に早稲田大学に入学すると、柔道部の活動が本格化し、佐々木はレギュラー選手として登場。練習に明け暮れる中で自分なりの工夫を凝らし、新たな練習方法を取り入れる。大会でも成果が現れ、1926年には明治神宮大会で準優勝、翌年には大会優勝を果たす。

また、1928年には東京学生連合として警視庁柔道部と対戦し、副将として出場した。彼の活躍は早稲田大学の柔道部だけでなく、学生柔道界においても大いに注目され、彼の名前は“早稲田の笠原”として広く知られることとなった。

実業家としての道

早稲田大学を卒業後、佐々木は柔道に専念することなく、古河鉱業に入社。営業部長や資材部長、監査役などを務め、実業界でも成功を収める。彼は柔道で培った精神と体力をビジネスに生かし、柔道家としての経験が彼の実業家人生にも影響を与えた。

柔道界への貢献

実業家としての道を歩む傍ら、佐々木は柔道界への貢献も忘れなかった。戦後、東京に戻ると、大きな練習場を持つ「丸の内柔道倶楽部」を設立。ここで、後進の指導に尽力し、柔道の普及・振興に貢献する。彼自らも講道館での指導を続け、次世代の育成に力を注いだ。

講道館での指導と後の健康問題

晩年、佐々木は講道館で指導員として後進の育成に努め、また自身も柔道の修行を続けた。しかし、歳を重ねるにつれて健康問題が影響を及ぼし始める。胃癌を患い入退院を繰り返す中で、自身の柔道への情熱を失うことはなかった。

最後の日々と遺産

1971年12月3日、65歳で他界。佐々木が残した柔道に対する情熱や理念は多くの人々に影響を与え続けている。遺族の証言によると、家では厳しさと優しさを兼ね備えた父であったという。彼の貢献は、今も柔道の現場に受け継がれており、彼の名前は日本柔道界において永遠に語り継がれることだろう。

言葉と思想

佐々木は柔道界への提言として、技術だけでなく精神的な成長が重要であると繰り返し説いていた。彼の考え方には、如何にして柔道を通じて自己を高めるかという深い哲学があった。特に、毎日の練習に多様性を持たせることの重要性を強調しており、その教えは今も多くの柔道家に受け継がれている。

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