佐々木弥

佐々木 弥（ささき わたる）氏は、1972年4月29日に秋田県由利郡大内町（現在の由利本荘市）で生を受けました。右投右打の内野手として、社会人野球界でその名を馳せました。

故郷である秋田県で野球の道を歩み始め、大内町立下川大内小学校から大内中学校を経て、本荘高等学校へと進学。残念ながら、在学中に甲子園への出場機会はありませんでした。

高校卒業後、地元に根差す企業であるTDKに入社。当時の社会人野球で採用されていた金属バットへの対応がスムーズだったこともあり、高卒という比較的若い年齢でありながら、早期から実戦の舞台に立つ機会を得ました。これは、木製バットからの切り替えに苦労する選手も少なくなかった時代において、佐々木氏の打撃キャリアの礎を築く上で有利に作用したと言えるでしょう。

1990年代後半になると、佐々木氏はTDK硬式野球部の打線の核となり、不動の4番打者としてチームを牽引します。力強い打撃でチームを勝利に導く一方、自チームだけでなく、他地域のチームからもその打棒を高く評価され、都市対抗野球大会には補強選手としても度々出場。全国の舞台でその実力を示しました。

長年の現役生活で培った豊富な経験と野球への深い理解が買われ、2006年シーズンからは選手としてプレーを続けながら、コーチを兼任することとなります。そして2008年限りでユニフォームを脱ぎ、現役選手としてのキャリアにピリオスを打ちました。翌2009年からは専任コーチとして後進の指導にあたり、チームを陰から支えました。

TDKのコーチ職を退いた後も、佐々木氏の野球に対する情熱は冷めることはありません。2021年時点では、秋田県野球協会の強化委員として、故郷秋田県の野球競技力向上と普及・振興に尽力しており、社会人野球で培った経験を地域に還元しています。

選手としてのキャリアにおける最大のハイライトは、2006年に開催された第77回都市対抗野球大会だったと言えるでしょう。この大会、TDKは七十七銀行からの補強選手である高橋利信選手と、岩手21赤べこ野球軍団からの補強選手である高倉啓司選手という実力者に挟まれる形で佐々木氏が4番に座り、強力打線を形成しました。初戦（伯和ビクトリーズ戦）では快音を響かせませんでしたが、2回戦（JR東海戦）では2点ビハインドで迎えた7回裏に反撃の狼煙となるホームランを放ち、チームに勢いをもたらします。準々決勝（ホンダ戦）では4四死球を選び、粘り強く出塁してチャンスメーク。そして迎えた準決勝（日本通運戦）では、3点ビハインドの3回表に反撃の口火を切るソロホームランを放ち、さらに3対5で迎えた7回表には、試合をひっくり返す値千金の逆転満塁ホームランをレフトスタンドに突き刺しました。この一打はチームを初の決勝進出へと導く歴史的な一撃となりました。決勝戦（日産自動車戦）でも貴重な安打を放ち、チーム史上初の黒獅子旗獲得に大きく貢献しました。

惜しくも大会MVPである橋戸賞は、圧倒的な投球でチームを牽引したエース野田正義投手に譲りましたが、佐々木氏の大会を通じての打棒、特に3本塁打という成績が高く評価され、打撃賞および一塁手部門の大会優秀選手に選出されました。さらに、同年には社会人野球界における一塁手として、社会人ベストナインにも輝くなど、2006年は佐々木氏にとって選手として最高の年となりました。

主な表彰、タイトル

第77回都市対抗野球大会 打撃賞（2006年）
第77回都市対抗野球大会 大会優秀選手（一塁手）（2006年）
* 社会人ベストナイン（一塁手）（2006年）

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