佐々木遊太

佐々木遊太（ささき ゆうた）は、1982年生まれの日本の紙芝居師であり、デジタルコンテンツ制作者です。慶應義塾大学を卒業後、デジタルコンテンツ制作や電子デバイスの企画・制作を本業とする傍ら、紙芝居の世界に足を踏み入れました。

きっかけは2005年、慶應の学園祭で紙芝居に夢中になる子供たちの姿を目にしたことでした。翌年、下町風俗資料館で紙芝居師・森下正雄の公演を観覧。喉頭癌で声を失いながらも昭和の伝統を守り続ける森下の姿に感銘を受け、師事することとなります。2007年3月には森下の前座としてデビューを果たしました。森下の没後もその遺志を継ぎ、地元である東京都国立市の公園や街頭で紙芝居公演を続けています。

佐々木の特徴は、昭和初期の紙芝居師のように、自転車の荷台に舞台を取り付けて街頭で公演を行う点です。多くの紙芝居師がイベントや施設での興業に移行する中、佐々木はあえて昔ながらのスタイルを守り続けています。これは、昭和の紙芝居師が自転車で回れる範囲で仕事をしていたという伝統を尊重しているためです。この活動は『出没!アド街ック天国』、『すけっち』、『東京サイト』など多くのテレビ番組や雑誌で取り上げられ、注目を集めています。また、佐々木は紙芝居を子供たちを楽しませるものと捉え、道徳的なメッセージを込めることはあまりありません。紙芝居の技術は、通常数年かかるところを半年で習得したと、師である森下も認めていました。

さらに、佐々木はデジタル技術を紙芝居に取り入れることにも意欲的です。2010年にはiPadを用いた新しい紙芝居を初披露しました。オリジナルのアプリケーションを使用し、観客の好きな物やその場で撮影した画像を使い、即興で物語を生成し、iPadの画面上で紙芝居のように表示させるというものです。この斬新な試みは、子供たちを中心に高い評価を得ており、第18回文化庁メディア芸術祭ではエンターテインメント部門の審査委員会推薦作品に選ばれました。また、2016年には『WIRED』主催の「CREATIVE HACK AWARD」でグランプリを受賞しています。

加えて、佐々木は昭和の紙芝居文化の保存にも貢献しています。多くの原画が紛失している現状を踏まえ、紙芝居作家・加太こうじの遺族の協力のもと、原画を複写した画像を用いて紙芝居を実演できるiPadおよびiPhone向けのアプリケーションを開発しました。このアプリを自らのウェブサイトで無料公開することで、昭和の紙芝居文化を後世に伝える活動にも力を入れています。

佐々木遊太は、伝統的な紙芝居の魅力を守りながら、デジタル技術を駆使して新たな可能性を切り開く、現代の紙芝居師と言えるでしょう。

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