佐伯由香里

佐伯 由香里

佐伯 由香里（さはく ゆかり）氏は、1988年11月5日に千葉県で生まれた元女子陸上競技選手です。主に長距離走やマラソンを専門とし、競技生活ではユニバーサルエンターテインメントに所属しました。身長142cm、体重30.5kgという小柄な体格でありながら、粘り強く力強い走りで多くの人々を惹きつけました。

経歴と活躍

佐伯選手は、高校時代から長距離に強い適性を見せ、通常は大学や実業団クラスの選手が出場する10000mのレースにも挑戦していました。全国的にはまだ無名だった高校卒業後、ユニバーサルエンターテインメント（所属当時はアルゼ）のアスリートクラブに入部し、名伯楽として知られる小出義雄監督の指導を受けながら才能を開花させました。

転機が訪れたのは、実業団入り後のことです。2008年8月、19歳で初めてマラソンに挑んだ北海道マラソンで、並み居る実力者を抑え、2時間31分50秒のタイムで女子の部優勝という鮮烈なデビューを飾りました。この勝利は、初マラソンでの優勝としては異例の快挙であり、陸上界に大きなインパクトを与えました。

翌2009年3月には東京マラソンに出場し、マラソン2連勝を目指しましたが、所属チームメイトの那須川瑞穂選手に先着を許し、自己記録を更新する2時間28分55秒で2位となりました。

マラソンだけでなく、トラック種目でも実力を発揮します。2009年6月の日本選手権10000mでは、大幅な自己記録更新となる32分01秒80をマークし、世界選手権のB標準記録を突破。マラソンで代表に内定していた赤羽有紀子選手に次ぐ2位に入賞しました。この結果を受け、同期の小林祐梨子選手と共に、自身初となる世界選手権代表に選出されました。

世界舞台での走り

2009年8月、ドイツ・ベルリンで開催された世界陸上選手権に日本代表として出場。女子10000m決勝に臨みました。結果は20位と最下位でしたが、レース終盤で先頭に2周回遅れとなりながらも、最後の瞬間まで決して諦めず、全力でフィニッシュラインを目指しました。そのひたむきな走りと、ゴール後に見せた清々しい笑顔は、ベルリンのスタジアム全体に温かい拍手と感動をもたらしました。大会公式マスコットに抱きかかえられたり、地元メディアから笑顔でインタビューを受けたりする姿が大型スクリーンに映し出され、多くの人々の記憶に残るシーンとなりました。

怪我との闘い、そして引退

世界選手権出場後は、怪我に苦しむことが多くなり、思うように競技活動を続けられない時期が続きました。このため、競技の第一線から距離を置くこととなりました。しかし、2015年3月に開催された三浦国際市民マラソンの10Kmの部に出場し、優勝という形で有終の美を飾りました。このレースをもって現役からの引退を表明し、同年3月末をもって長年所属したユニバーサルエンターテインメントを退社しました。

引退後

現役引退後は、学業に専念し、聖徳大学を卒業しました。その後は陸上界に携わる道を選び、現在はニッポンランナーズのスタッフとして、後進の指導やランニングの普及に貢献しています。

人物像とエピソード

佐伯選手は非常に練習熱心な人物として知られています。小出義雄監督からは、あまりに練習しすぎると体重が落ちすぎてしまうため、「体重が30kgを切ったら試合に出さない」と忠告されるほどだったといいます。また、憧れの選手は、同じ小出門下生でオリンピック金メダリストの高橋尚子氏であり、高橋氏のサイン入り著書『風になった日』を宝物として大切にしていました。世界陸上での最後まで諦めない走りは、その練習の賜物であり、小柄ながらも強い精神力を持つ佐伯選手の姿勢を象徴しています。

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