佐分利貞男

佐分利 貞男の生涯と外交官としての業績

佐分利 貞男（さぶり さだお）は、1879年1月20日に広島県で生まれ、1929年11月29日に急死した日本の外交官です。彼は明治・大正・昭和初期にわたる日本の外交を見守りながら、そのキャリアを築きました。佐分利家は備後福山藩士という名門に生まれ、伝統的な武道に親しむ環境で育ちます。彼の妻は外交官として名を馳せた小村寿太郎の娘・文子であり、その関係もまた彼の外交キャリアに影響を与えました。

経歴と外交官としての足跡

佐分利は1905年に東京帝国大学法科大学を卒業後、外交官及領事官試験に合格すると、外交官補としてのキャリアを始めました。その後、清国やロシア、フランスなどで勤務、外務省内では重要なポジションを歴任しました。特に外務省参事官や大使館参事官、通商局長、条約局長といった役職を担い、日本の外交政策に大きな影響を与えました。

1929年には浜口雄幸内閣の外相・幣原喜重郎から請われ、駐支那公使に就任します。この役職は彼にとって重要なものであったものの、当時の国際情勢や外交関係の厳しい状況から、特に対支外交において期待が寄せられていました。しかし同年11月29日、佐分利は箱根の富士屋ホテルで変死体として発見され、彼の死は大きな波紋を呼びました。

急死とその真相

佐分利は宿泊していた富士屋ホテルで、前日の夜からの滞在中に発見されました。警察の調査によると、彼は右手に拳銃を握り、頭部を撃ち抜いた状態で発見されたため、自殺と断定されました。生前彼は愛妻家であり、1925年に亡くなった妻を深く惜しんでいました。そのため、亡妻を慕うあまりの後追い自殺との見方もあった一方、外交官としての苦悩や対支外交の行く末を悲観しての自殺とも囁かれました。

しかし、自殺とされる背景には多くの疑念がありました。佐分利は左利きであったため、右手でピストルを持っていることに違和感があるとされています。また、遺書は見つからず、特に外交官としての清らかなイメージからは不自然な状況での自殺であるとの指摘もあり、他殺の可能性も取り沙汰されました。

他殺の可能性と名誉毀損訴訟

佐分利の死後、彼の死因については多くの憶測が飛び交いました。ピストルは使用された形跡がありましたが、彼の日常的な護身用のものとは異なる大型拳銃でした。これにより、他の犯人による殺害の疑いが高まると共に、大陸浪人や中国国民党の工作員の関与を示唆する声も上がりましたが、真相は明らかになっていません。

また、彼の死後、同級生の広田弘毅との関係を描いた城山三郎の小説に名誉棄損で訴訟を起こした事例もありました。この訴訟は、死者に対する名誉毀損が損害賠償となるかを巡る重要なケースとなり、注目を集めました。

栄典と家族

佐分利はその間に数々の栄典を受けました。1911年には勲五等瑞宝章、1912年には韓国併合記念章、1920年には勲三等旭日中綬章を授与されています。彼の家族には、弟や子供がいたり、親族がそれぞれ異なるキャリアを築いていたことからも、彼の背景が垣間見えます。

このように、佐分利貞男の人生は、日本の外交史の中で重要な位置を占めるものでした。彼の突然の死は、未だ多くの謎を呼び起こしながら、その業績は忘れ去られることはありません。

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