佐古純一郎

佐古純一郎

佐古純一郎（さこ じゅんいちろう、1919年3月7日 - 2014年5月6日）は、日本の文芸評論家、二松学舎大学名誉教授、日本基督教団中渋谷教会名誉牧師です。徳島県に生まれ、旧制徳島中学校、朝鮮の光州東中学校を経て二松学舎専門学校に進学しました。

生涯

二松学舎専門学校在学中に評論家の亀井勝一郎に師事し、評論家としての道を歩み始めます。その後、日本大学法文学部宗教学科に進み、在学中に改造社主催の文芸推薦評論で佳作入選を果たします。大学卒業後は創元社に入社し、小林秀雄の指導を受けました。第二次世界大戦中は海軍に召集され、対馬で終戦を迎えます。

戦後、日本基督教団中渋谷教会で洗礼を受け、日本[[聖書神学校]]に進学しますが、後に退学します。その後、文芸評論家として活動を本格化させ、文学界の課題評論で入選するなど、その才能を開花させました。

1957年には「文学はこれでいいのか」という論文を発表し、文学界で大きな論争を巻き起こしました。評論活動と並行して、宇都宮大学、聖心女子大学、上智大学、日本女子大学、二松学舎大学など、数々の大学で教鞭を執りました。二松学舎大学では教授、理事を経て学長に就任し、後年には名誉教授の称号を授与されています。

1998年には日本キリスト教文化協会からキリスト教功労者として表彰を受け、2014年に老衰のため95歳で生涯を閉じました。

人物

佐古純一郎は、文学とキリスト教信仰を融合させた独自の文芸評論を展開しました。特に、椎名麟三、遠藤周作、三浦綾子といった作家たちとの親交は深く、彼らの作品に大きな影響を与えたと考えられています。

創元社時代には、編集会議で小林秀雄と激しい議論を交わし、殴られて階段から落ちたというエピソードが残っています。隆慶一郎は当時の創元社を「奇妙な出版社」と評し、小林秀雄を中心とした「塾」のような場所だったと述べています。

佐古の評論は、文学作品を単なるテキストとしてではなく、人間の存在や信仰、倫理といった深遠なテーマと結びつけて考察する点が特徴です。その独自の視点は多くの読者に影響を与え、戦後の文芸評論界において重要な役割を果たしました。

著書（一部）

佐古純一郎は、多数の著書を執筆しています。

『純粋の探求』
『漱石の文学における人間の運命』
『倫理への感覚』
『小林秀雄ノート』
『芥川龍之介における芸術の運命』
『信仰と文学』
『文学はこれでいいのか』
『近代日本文学の悲劇』
『太宰治におけるデカダンスの倫理』
『文学に現われた現代の青春像』
『近代日本文学とキリスト教』
『親鸞 その宗教的実存』
『芭蕉 その詩的実存』
『夏目漱石論』
『パウロと親鸞』
『キリスト教入門』
『三浦綾子のこころ』
『太宰治の文学』
『ヘルマン・ヘッセの文学』

これらの著書は、彼の思想や文学観を理解する上で貴重な資料となっています。また、対談集や記念論文集も出版されており、彼の多面的な活動を知ることができます。

参考文献

佐古純一郎教授退任記念論文集（朝文社）
「私の出会い」佐古純一郎（審美社）

関連項目

文芸評論
* キリスト教

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