佐渡流人行

佐渡流人行 - 松本清張著



『佐渡流人行』は松本清張が1957年に発表した短編小説であり、同年に短編集として刊行されました。この作品は、流人制度下の人間関係や感情の葛藤を通じて、個々の人間性や業の深さを描写しています。

あらすじ


物語は、佐渡の支配組頭として命じられた横内利右衛門が主人公です。彼は、下役の黒塚喜介を金山方広間役として佐渡に連れて行くことになります。喜介は、こちらへの情報提供を通じて、出獄直後の弥十を佐渡に送ることを考えます。喜介の弥十に対する憎悪は、三年前に自身の妻、くみを横内の仲人を通じて奪われたことに由来しています。

弥十とくみの間には過去があり、喜介は自らの妻を横内の紹介で弥十と出会わせたことで、不安と嫉妬を抱くようになります。弥十が無頼の仲間に加わったことを耳にした喜介は、その影響を受け、与力の一人を買収して弥十を牢に送る事に成功します。以降、喜介は自らの計画を遂行し、弥十を心ゆくまで弄ぶために、佐渡への出張から地役人である占部三十郎を利用するなど、不正手段を使って彼の意のままに操ろうとします。

十日後、横内が佐渡に到着し、弥十は数度にわたり落盤の危険がある間歩に送られます。その後、流人たちの強訴運動の情報が弥十に伝わり、遂には敷内追い込みへの厳しい処分が待っていました。喜介は弥十の処連を決定し、廃坑の入口へと連行することを決意しますが、彼の足は急に止まります。

作者の背景


この小説は、清張が上石神井に引っ越した後に制作した作品で、流人の水替作業についての理解を深めるために佐渡を訪れたことが影響しています。帰宅後も関連文献を探し続け、麓三郎の『佐渡金銀山史話』を読むことで多くの発見をしました。また、著者はその後、作家の活動についてさらに語り合うために麓氏を訪れ、その知識を深める場を持ちました。

評価と影響


本作は、松本清張の作品の中でも特に評価が高いとされ、推理作家の有栖川有栖は作品の最後の行を「清張作品の中で最も好きなエンディング」と語っています。また、この小説は映画『無宿人別帳』においてもキャラクターや設定が活用されており、文学から映像表現へとその影響を広げていきました。

『佐渡流人行』は人間関係の複雑さや敵対感情が引き起こす悲劇を深く探求した作品として、今なお多くの読者の共感を呼び起こし続けています。

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