無宿人別帳

短編集『無宿人別帳』の詳細

『無宿人別帳』は、著名な作家・松本清張によって1958年7月に発行された短編集です。この作品は、江戸時代に戸籍に名前を記載されなかった無宿者を主人公にした短編の集まりであり、各話で異なる無宿者の人生を描写しています。

概要

本短編集は、1957年9月から1958年8月にかけて『オール讀物』で連載され、その後新潮社から単行本として出版されました。各短編は、時代背景や無宿者たちの苦労や葛藤を軸に展開し、清張独自の視点で人物の心理を巧みに描写しています。

収録作品には以下の短編が含まれています。

• - 『町の島帰り』
• - 『海嘯』
• - 『おのれの顔』
• - 『逃亡』
• - 『俺は知らない』
• - 『夜の足音』
• - 『流人騒ぎ』
• - 『赤猫』
• - 『左の腕』
• - 『雨と川の音』

特に注目すべきは、『町の島帰り』『俺は知らない』『流人騒ぎ』『赤猫』『左の腕』『雨と川の音』の6作がテレビドラマ化されている点です。これらの作品は、放送を通じて広く知られることになりました。

作品の特色

松本清張は、短編集『無宿人別帳』を通じて、無宿者という社会的に弱い立場にある人々に温かな目を向けています。評論家の加太こうじは、清張が無宿者たちの失われた戸籍を復活させようとする意図が背景にあると述べており、作品が無宿者たちの「銘々伝」としての役割を果たしているとしています。

また、作家の阿刀田高も、連載が始まった当年の一月号で『佐渡流人行』を執筆しており、これは連作へと発展する可能性を示唆していると思われます。

演劇への影響

短編集に収録された『左の腕』は、落語の演目としても知名度が高まり、著名な落語家たちによって再構成されて演じられています。三代目桂三木助や二代目橘家文蔵が名演を残し、後世の落語家に引き継がれています。

映画化とテレビドラマ

『無宿人別帳』は、清張の別の短編『佐渡流人行』を基にした映画にも影響を与えています。この映画は、短編『逃亡』の要素を織り交ぜて脚色されたものであり、主要キャストには佐田啓二や岡田茉莉子などが起用されています。 DVDとしても販売されています。

テレビドラマ版

本短編集に基づくテレビドラマも数回制作されています。1958年の版は日本テレビ系列で放送され、2015年版はBSジャパンにて特集企画として放送されました。

各短編はいずれも、松本清張ならではのサスペンスと、人間の内面に踏み込む深い洞察力が際立つ作品となっています。

短編集『無宿人別帳』は、その文学的価値や社会的メッセージから、時代を超えて多くの読者に愛され続けています。

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