佐藤信季

佐藤信季（さとう のぶすえ）

生涯

佐藤信季は、享保9年11月15日（1724年12月30日）に出羽国雄勝郡西馬音内村（現在の秋田県雄勝郡羽後町西馬音内）に生まれました。江戸時代中期の農政学者であり、玄明窩と号しました。父は農学者の佐藤信景で、長男には同じく農学者として知られる佐藤信淵がいます。信季は医業に携わる傍ら、農政学の研究に励みました。

信季は、長男の信淵を伴い、蝦夷地や東北、関東地方を各地を巡り、その土地の状況を詳細に観察しました。しかし、下野国足尾で客死し、61歳でその生涯を閉じました。彼の旅を通じて得られた知見は、その後の著作に大きな影響を与えたと考えられています。

業績

信季の代表的な著作として、安永9年（1780年）に著された『漁村維持法』が挙げられます。この書は上下二巻から構成されており、上巻では為政者が漁村や漁民に対してどのように取り組むべきかを論じ、下巻では九十九里浜などの地引き網漁業の実情を詳細に記述しています。特に、九十九里浜の地引き網によるイワシ漁については、「予あまねく四海を遊歴して地曳網に働く者を見ること多し、然れども諸国の漁事、九十九里の地曳に如くものあることなし」と高く評価しています。この記述から、信季が各地の漁業を比較検討し、九十九里浜の漁業が特に優れていると認識していたことが伺えます。

その他にも、堤防水利の工事法を記した『堤防溝洫志』や、農政と草木培養の方法を論じた『培養秘録』などの著作があります。これらの著作は、信季が口述したものを信淵が筆記し、校訂したとされています。そのため、これらの著作は信淵の著述としてもみなされることがあります。

評価と影響

佐藤信季は、農政学者としてだけでなく、各地の状況を詳細に観察し、その実態に基づいた考察を行った点で高く評価されています。彼の著作は、当時の農業や漁業の状況を理解する上で重要な資料となっています。また、息子の信淵によって著作が整理され、後世に伝えられたことも、信季の業績が長く記憶される要因となりました。

参考文献

上田正昭 『講談社日本人名大辞典』講談社、2001年、ISBN 4-06-210849-6
小林欣司 『朝日日本歴史人物事典』朝日新聞社、1994年、ISBN 4-02-340052-1
* 角川日本地名大辞典編纂委員会 『角川日本地名大辞典 12 千葉県』 角川書店、1984年、ISBN 4-04-001120-1

もう一度検索