佐藤元彦 (経済学者)

佐藤 元彦

佐藤 元彦（さとう もとひこ）氏は、1958年11月生まれの日本の経済学者です。その専門は開発経済学、とりわけ発展途上国経済に関する研究に深く関わっています。愛知大学における要職を歴任し、第16代学長を務めたことで知られています。

研究とキャリアの始まり

青森県弘前市に生まれた佐藤氏は、慶應義塾大学経済学部を卒業後、広島大学大学院へと進み、地域研究研究科で修士号を取得しました。その後、同大学の社会科学研究科博士課程にて単位取得満期退学し、研究者としての道を歩み始めます。日本学術振興会の特別研究員を経て、1991年4月に愛知大学経済学部に専任講師として着任しました。

愛知大学での昇任と要職

愛知大学では、専任講師、助教授、教授と昇任し、2003年4月には経済学部長に就任します。学部長在任中の2004年には、愛知大学内に三遠南信地域連携センター（現在の三遠南信地域連携研究センター）が設立され、佐藤氏はその初代センター長を兼務しました。学部長退任後には愛知大学国際問題研究所長を務めますが、半年後の2007年11月には、新学長に就任した堀彰三氏によって経営担当の副学長に指名され、研究所長を離任し、副学長に就任します。

副学長時代と学長就任

副学長在任期間中、2008年2月に長野県栂池高原スキー場で、正課活動中のスキー実習に参加していた愛知大学の学生2名が雪崩に巻き込まれ死亡するという痛ましい事故が発生しました（栂池高原スキー場雪崩事故）。引率の非常勤講師が禁止区域に学生を誘導していたことが判明し、大学の管理責任が厳しく問われる事態となります。こうした状況下で、事故対応などによる心労から健康状態が悪化したとして、堀学長が同年5月末に辞任します。これに伴い、佐藤氏が学長代行を務めることとなり、同年8月1日の学長選挙で選出されたことで、第16代愛知大学学長に正式に就任しました。2011年には学長として再選を果たしています。

学長としての取り組みと課題

学長在任中、佐藤氏は大学の発展に尽力しました。主な功績としては、豊橋校舎における地域政策学部の新設、そしてみよし市にあった名古屋校舎を名古屋市中村区の旧笹島貨物駅跡地へ移転させるという大きなプロジェクトの実現が挙げられます。また、地域社会との連携を重視し、周辺自治体との連携協定を積極的に締結するなど、地域貢献にも力を入れました。その一方で、副学長在任中に大学のデリバティブ取引において約118億円もの多額の損失が発生していたことが明るみに出ます。この損失は、名古屋校舎の移転計画の一部遅延や、名古屋校舎への新学部設置計画の凍結を招く結果となりました。この問題を受け、学長在任中の2012年11月には一部の大学教職員により名古屋地方検察庁特別捜査部に告発されましたが、翌2013年12月には不起訴処分となっています。

退任後の活動と研究業績

愛知大学の規程（3選禁止）により、2015年11月に任期満了で学長を退任しました。後任には、自身の下で副学長を務めた川井伸一氏が就任しました。

学長退任後も、佐藤氏は研究者として、また大学行政に関わる人物として活動しています。これまでに日本私立大学連盟理事、大学基準協会評議員、名古屋大学出版会評議員などの要職を歴任しました。

専門分野である開発経済学を中心に、数多くの研究成果を発表しています。主な著書には、単著『脱貧困のための国際開発論』のほか、発展途上国経済や国際協力に関する編著、共著などがあります。また、アジア政経学会、国際平和研究学会、社会経済学進歩学会などの学会にも所属し、研究活動を続けています。

佐藤元彦氏は、経済学者としての深い知見に加え、愛知大学の学部長、副学長、そして学長として、激動の時代における大学運営の舵取りを担い、大学の教育・研究環境の整備や地域連携の推進に貢献した人物と言えます。

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