何者 (朝井リョウ)

小説『何者』について

朝井リョウの小説『何者』は、2012年に新潮社より発表された作品で、第148回直木三十五賞を受賞しています。この小説は、御山大学の演劇サークルに所属する若者たちが就職活動に挑む姿を描いており、社会の理不尽さや人間関係の複雑さを鏡のように映し出しています。また、2016年には映画化され、さらには2017年秋には舞台化もされています。

あらすじ

物語は、就職活動を控えた22歳の大学生5人の生活を中心に展開します。主人公の二宮拓人は、演劇の脚本を書きながら、周囲の人々を観察し彼らの心理を分析することに長けた性格です。光太郎は友人であり、お調子者に見えるが、実は就職内定の道を着実に歩んでいます。田名部瑞月は拓人が密かに思いを寄せる相手で、光太郎にも複雑な感情を抱いています。小早川理香は「意識高い系」との自負がありながらも、就活には悩み多き存在。最後に、宮本隆良は就職活動をしないと口にしていますが、内心は焦りを隠し持っています。

彼らは理香の部屋を「就活対策本部」と定め、様々な方法を駆使して就職活動に挑みます。それぞれの経験や思いをSNSに記しながら、彼らの内面に潜む本音や焦燥感が絡み合い、特に光太郎が内定をもらった時には嫉妬や矛盾といった感情が表面化していきます。この過程で、彼らは自身の価値観や人間関係を見つめ直すことになります。

登場人物

物語に登場するキャラクターは数少なく、主に拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良の5人が中心となっています。

• - 二宮拓人（にのみや たくと）: 主人公で観察力に富み、感受性が高い。
• - 神谷光太郎（かみや こうたろう）: 拓人の友人で明るく社交的。バンド活動を経験。
• - 田名部瑞月（たなべみづき）: 拓人の片思いの相手であり、一時光太郎に恋していた。
• - 小早川理香（こばやかわ りか）: 留学経験があり、就活に対する意識が非常に高い。
• - 宮本隆良（みやもと たかよし）: 理香の彼氏であり、就職活動に批判的。

映画・舞台化

『何者』は小説の後、2016年に映画として公開されました。この映画は三浦大輔が監督し、佐藤健、有村架純、菅田将暉らの豪華キャストが出演しました。映画化されたことで、さらに多くの人々にこのストーリーが広まりました。
また、2017年には舞台化され、ジャニーズJr.の阿部顕嵐らがキャストを務め、多くの観客を魅了しました。音楽や演出にも工夫が凝らされ、舞台ならではの表現がなされています。

『何者』は若者の就職活動や人間関係の模索をテーマにしており、ただのフィクションに留まらない深いメッセージを持った作品です。若者たちの迷いや葛藤は、視聴者にリアルな共感を呼び起こします。この作品は現代社会におけるプレッシャーや不安を描いた代表的な作品と言えるでしょう。

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