佛向寺

佛向寺（ぶっこうじ）

山形県天童市にある佛向寺は、浄土宗に属する寺院で、宝樹山と号します。本尊は阿弥陀如来で、正式名称は寳樹山稱名院佛向寺です。かつては時宗の寺院であり、その歴史は13世紀にまで遡ります。

歴史

創建

佛向寺は、1287年に一向俊聖によって創建されたと伝えられています。ただし、一向俊聖の弟子である行蓮が開山したとする説もあります。行蓮は宇都宮一向寺の阿弥陀如来像に銘を残しており、関東地方にも足跡を残していたことがわかっています。また、「一向上人血脉譜」によれば、行蓮は下野宇都宮一向寺と羽州藻上（最上）佛向寺を開山したとされています。

中世の発展

二階堂氏や里見氏の庇護のもと、佛向寺は勢力を拡大し、村山・置賜地方に多くの支寺・末寺を建立しました。村山地方だけでも24ヶ寺に及んだといいます。南北朝時代に入ると、斯波兼頼（最上氏の祖）の係累が里見氏の養子となり、本拠地を成生から天童に移しました。それに伴い、佛向寺も天童へ移転し、天童城の西の守りとしての役割を担うようになりました。佛向寺は僧兵を有しており、戦国時代には天童氏と行動を共にし、最上氏と対立しました。1584年には、最上義光による天童城攻めの際、佛向寺の堂宇は焼失してしまいます。

江戸時代

江戸時代には、番場蓮華寺との間で本山争いが起こりました。その結果、佛向寺が中本山、蓮華寺が大本山となりました。『時宗要略譜』によれば、佛向寺は時宗十二派の一つである天童派を形成したとされていますが、佛向寺周辺では一向派もしくは番場派を名乗り、天童派は用いられませんでした。文化年間には失火により堂宇を再び焼失し、現在の堂宇は文政年間に再建されたものです。

近現代

明治時代には、斎藤茂吉が薫陶を受けた佐原隆応が活躍し、『大本山蓮華寺法』が制定され、一向派の地位が向上しました。佐原隆応の師は誠阿です。1942年、佛向寺は浄土宗に帰属しました。

踊躍念仏

佛向寺では、毎年11月17日の開山忌に、踊躍念仏という独特の儀式が行われます。これは、僧侶が踊りながら念仏を唱えるもので、一向を偲ぶために行われます。踊躍念仏は旧山形県指定無形民俗文化財であり、浄土宗の宗宝にも指定されています。

佛向寺跡

佛向寺の旧跡は、成生荘地頭の二階堂氏の館跡であるという説もあります。この場所からは念仏鉦が出土しています。また、近くの高野坊遺跡からは、1311年に一向俊聖の二十七回忌を勤めたという礫石経が出土しています。かつて、成生街道沿いには下馬止めの欅があったといわれています。

まとめ

佛向寺は、その長い歴史の中で、時宗から浄土宗へと宗派を変えながらも、地域の人々の信仰を集めてきた寺院です。戦乱や火災を乗り越え、現在もその姿を伝えています。特に、踊躍念仏は貴重な民俗文化財として、その伝統が守り続けられています。

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