作家の値うち

『作家の値うち』：福田和也の文学評論

『作家の値うち』は、2000年に飛鳥新社から発表された福田和也による独特な形のブックガイドです。本書では、日本文学の現役作家を純文学とエンターテイメントそれぞれから50名選出し、作品に点数をつけて評価します。この斬新な手法は、著者がワインの評価方法を模倣したことに起因しています。

評価基準

本書の評価は明確に設定された基準に基づいています。90点以上の作品は「世界文学の水準」の評価を受け、その影響力を示しています。80点以上は「近代日本文学史で重要な作品」とし、時代を超えた価値を持つ作品として位置づけています。70点以上は「現在の文学として優れた作品」とされ、現代の読者にも支持される作品群です。一方、40点未満は「人に読ませる水準でない作品」と評価され、さらには30点未満は「人前で読むと恥ずかしい」と厳しい言葉で評されます。

評価の分かれ道

このような評価基準は、本書が発表されると文学界で物議を醸しました。小説に点数をつけるという試みは前代未聞であり、それに対する賛否が分かれたのです。本書では、村上春樹、矢作俊彦、小島信夫、石原慎太郎といった作家が高評価を受ける一方で、大江健三郎や渡辺淳一、日野啓三、五木寛之といった著名な作家には厳しい批評がなされています。

特に注目すべきは、高橋源一郎の評価です。彼の作品『さようなら、ギャングたち』は91点と驚異的な高評価を受ける一方で、同じ作者の『ゴーストバスターズ 冒険小説』については「恥知らず」の一言で切り捨てています。この状況は、作品の質に対する著者の厳しい目線を示しており、読者に強い印象を与えています。

影響と関連書籍

『作家の値うち』は単なるブックガイドを超え、文芸評論の新たなスタイルを築いたと言えるでしょう。文学の評価を数値化する試みは、読者に新たな視点を提供し、作家や作品について考える契機を与えました。また、関連書籍として『作家の値うちの使い方』も出版されており、より具体的な評価の解説や参考として利用されています。

今後、このような評価軸がさらなる文学の発展に寄与することが期待されます。福田和也の『作家の値うち』は、ただの評価ではなく、文学を深く理解するための一つの手段として、我々に新しい扉を開いてくれる作品と言えるでしょう。

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