便宜的国教徒禁止法

1711年便宜的国教徒禁止法の概要

1711年に制定された便宜的国教徒禁止法は、イギリスにおける宗教に関連した法律の一つです。主に非国教徒とカトリック教徒の公職就任を禁止する内容が盛り込まれていました。この法律は、1661年の地方自治体令や1673年の審査法に基づくもので、国教会の聖餐を受けて国教徒であると証明することが求められていました。これは、国教会に属さない者の公職排斥を目的としており、公職に就くための条件を厳格に定めていました。

法律の背景と目的

17世紀のイギリスでは、非国教徒やカトリック教徒に対する差別が制度化されていました。公職に就くためには、国教徒であることの証明が必要でしたが、このプロセスには抜け道が存在しました。つまり、聖餐を受けた後に国教徒であると宣言しさえすれば、その後は非国教徒として生活しても問題がありませんでした。このため、非国教徒の中には一度の宣言で社会に入り込む者が続出しました。

この状況を受けて、1702年にトーリー党は便宜的国教徒禁止法案を議会に提出しました。この法案には、宣言後に非国教徒として活動した場合は公職から追放されることや罰金が課せられることが盛り込まれていました。しかし、上院ではホイッグ党が優勢であり、法案は1703年に廃案となりました。トーリー党内でも意見が分かれ、結果的には追放問題は棚上げにされました。

法案の成立までの経緯

1703年の法案は否決された後、ゴドルフィン大蔵卿は生活に困窮する国教徒を支援するため、アン女王基金を設立しました。これにより、トーリー党の主張を封じることに成功しました。しかし、トーリー党の急進派はさらなる法案提出を模索し、結果的に1711年にようやく新たな法案が提出されました。

この4度目の法案は、政権を取ったトーリー党の穏健派リーダーとホイッグ党の急進派が対立しながらも結びつき、最終的に法案は可決されました。法案は、非国教会の礼拝に参加した者に対して公職追放や罰金を課す内容でした。これは、国教会の優位を保つことを意図していました。

法律の結果とその影響

とはいえ、この法律は社会に強い不評を買い、実際の施行は厳密には行われませんでした。1719年にはこの法律は廃止され、イングランド国教会の優位を認めつつも、非国教徒に対する一定の寛容が続くことになりました。

このように、1711年便宜的国教徒禁止法は、イギリスにおける宗教的緊張の表れであり、時代の流れとともに変化する社会情勢を反映していたことが伺えます。法案の成立とその後の廃止は、当時の宗教的不寛容と社会的要求が絡み合った結果であり、イギリスの宗教政策の変遷を示しています。

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