審査法

審査法とは：イングランドにおける宗教的資格制限の歴史

審査法（Test Acts）は、イングランドにおいて特定の官公庁への就任を希望する者に対して、宗教的な審査を義務付けた一連の法律です。これは、ローマ・カトリック教徒や非国教徒に対する差別を制度化し、公的な地位から排除することを目的としていました。

審査法の基本方針

審査法の根本的な方針は、イングランド国教会の信徒であることを公言する者こそが、官公庁の職務にふさわしいという考えに基づいています。国教会に帰依しないカトリック教徒や非国教徒に対しては、さまざまなペナルティを課すことで、国教会の優位性を確立しようとしました。しかし、実際には、非国教徒は免責法によって、これらの法律の適用を免れることが多くありました。

審査法の具体例

地方自治体法（Corporation Act 1661）

チャールズ2世の時代には、国教会での聖餐を受けることが公職就任の必須条件となりました。その初期の例が1661年の地方自治体法です。この法律により、地方自治体の役人は、国王の至上権を宣誓した者を除き、1年以内に国教会の礼拝様式に沿って聖餐を受ける必要がありました。

1673年審査法

1673年の審査法では、文武を問わず全ての公職者に対し、国王至上権への忠誠を誓い、全実体変化（Transubstantiation）に反対する旨を署名し、就任後3か月以内に聖餐を受けることを義務付けました。この法律の目的は、カトリック教徒が公職に就くことを阻止することにありました。

1673年法の誓言の内容は以下の通りです。

"I, N, do declare that I do believe that there is not any transubstantiation in the sacrament of the Lord's Supper, or in the elements of the bread and wine, at or after the consecration thereof by any person whatsoever."

1678年審査法

当初、審査法は貴族には適用されませんでしたが、1678年には審査法が拡張され、全ての貴族と代議員に対し、全実体変化や聖人への祈願、ミサの秘跡に反対することを宣誓することが求められました。この改正により、ウィリアム・ハワード（初代スタッフォード子爵）をはじめとする、カトリックの貴族たちが議会から排除されました。この出来事は、カトリック陰謀事件の一因になったとも言われています。

審査法の廃止

公職就任における聖餐の受領義務は、1828年の聖餐審査法によって廃止されました。さらに、国王至上権の承認と全実体変化への反対を求める法律は、1829年のカトリック解放法によって完全に廃止されました。

審査法の意義

審査法は、イングランドの歴史における宗教的寛容の欠如を示す一例です。特定の宗教的信条を持つ人々を公的な地位から排除することは、現代の政教分離の原則に反するものであり、人権の尊重という観点からも問題があります。審査法の廃止は、イングランド社会がより寛容で多様性を受け入れる方向へ進む上で重要な一歩となりました。

参考文献

Baynes, T. S.; Smith, W.R., eds. (1888). "Test Acts" Encyclopædia Britannica (英語). Vol. XXIII (9th ed.). New York: Charles Scribner's Sons. p. 199.

関連項目

便宜的国教徒禁止法

外部リンク

* Committees for the Repeal of the Test and Corporation Acts: the minutes of two committees for the repeal of the Act

もう一度検索