保命酒

保命酒（ほうめいしゅ）について

保命酒は、広島県福山市で作られる薬味酒で、特に生薬が用いられている点が特徴です。この酒は「瀬戸内の養命酒」とも称されていますが、養命酒とは異なり、医薬品ではありません。保命酒の製造は歴史があり、その起源は万治2年（1659年）にさかのぼります。考案者である大坂の医師中村吉兵衛は、洪水で家計が苦しくなったことをきっかけに、備後国鞆に移り住み、地元の杜氏たちの知恵を借りて保命酒を製造し始めました。

製品の概要と成分

保命酒は中村家が代々製造・販売を行っていましたが、明治時代に入ると様々な業者が類似の酒を製造し、現在では4社が製造を続けています。中村家の製法は代々守られてきたため、詳細が不明でしたが、2006年に古文書から13種類の生薬を使用していることが明らかになりました。正式名称である「十六味地黄保命酒」は、これらの生薬と共に焼酎やもち米、米麹を加えたことによるものです。実際のところ、現在の保命酒は中村家の製法を模倣したもので、各社とも16種の生薬を使用していますが、元々の保命酒の成分は13種であったことから、誤認が生じていることに注意が必要です。

使用される生薬

製造元によって若干異なる点があるものの、現在の保命酒には多くの生薬が用いられています。最も影響を受けるのは、製造元ごとの個性やスタイルであり、中村家の保命酒にのみ用いられていた梅花やいばらの花は一般には使用されていません。製造工程は味醂を基本とし、もち米、米麹、焼酎を加え、地域特有の生薬を調合して作られます。

効能と飲用方法

保命酒は医薬品ではないものの、含まれる生薬成分をアルコールが浸透しやすくし、体温を効果的に上昇させるとされています。特に冬はお湯割りで飲むと体が暖まり、夏はオンザロックや水割り、または炭酸割りで飲むことで夏バテ予防になるといわれています。加えて、疲労感や冷え症、頻尿、尿の減少、しびれ、かすみ目といった症状への効能も期待されているため、日常生活の中で健康維持をサポートする役目も果たしています。

派生商品とその他の利用

保命酒はそのまま飲むだけでなく、酒粕を使用したアイスキャンディーやゼリー、さらには甘味などのデザートに加工されて提供されることもあります。また、保命酒を梅酒とブレンドした商品も開発されており、新たな楽しみ方が形作られています。特に「仙酔仙人」というケーキは、モンドセレクションで最高位の特別金賞を受賞するなど、高い評価を得ています。

販売場所と入手方法

保命酒は、福山市の鞆の浦にある醸造元の他、JR福山駅や広島空港内の土産物店、酒屋など様々な場所で購入可能です。さらに、最近ではオンライン販売も普及しており、簡単に手に入れることができるようになりました。製造元としては、岡本亀太郎本店、入江豊三郎本店、八田保命酒舗、鞆酒造が現在も存在し、それぞれが独自の製法で保命酒を提供しています。

歴史を振り返る

保命酒の創始者である中村吉兵衛は、江戸時代の初めに高級酒として全国的に名を馳せました。特に公家や武士などに愛され、外国の使節などにも振る舞われることが多かったと伝えられています。しかしながら、明治時代に入ると競合が増え、結果的に中村家は1903年に廃業を余儀なくされました。現在の保命酒は、その名の下で新たに登場した製造元により受け継がれ、独自の魅力を保っています。

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