保甲制度 (台湾総督府)

保甲制度について

保甲制度（ほこうせいど）は、日本の統治下にあった台湾で台湾総督府が導入した地方行政機関であり、住民の自治を基盤とした組織です。この制度は、台湾社会の安定を図るために設立されました。主に漢民族系の本島人が対象とされ、警察と連携した組織でした。

制度の概要

日本が台湾を統治する際、多くの既存の制度が変更または廃止されましたが、保甲制度は例外でした。この制度は、1900年に施行された保甲条例に基づき設けられ、10戸で1「甲」を、10甲で1「保」とし、組織化されました。「甲」には「甲長」という役員が、「保」には「保正」が設置され、地方の自治活動を促進しました。さらに、住民は無償で保甲の業務に従事する必要があり、その経費は自己負担とされました。この改革により、保甲制度は台湾総督府の意向を受け、効率的な住民管理を実現する道具と化しました。

業務内容

保甲の主な業務には、戸口調査、出入者の監視、自然災害や犯罪への警戒、公共物の維持管理、感染症予防などがあります。1909年以降は、法令の周知や地方税の督促などの業務も加わり、保甲の役割はますます拡大しました。特に、住民の動静を監視することが求められ、相互に監視を行うことで犯罪の抑止を図りました。

連座制と社会統制

保甲制度の特徴のひとつは、連座制の導入です。住民同士が監視し合うことで、一人の違反行為が他の家族や隣人に影響を及ぼす仕組みが作られていました。この制度によって、社会全体の秩序を維持する役割が果たされました。違反があった場合、家長や保甲全員が責任を問われ、責任の所在が明確にされました。このような社会的コントロールは、当時の台湾において重要な機能を果たしました。

地方行政への協力

台湾社会が安定するにつれ、保甲制度は地方行政においても重要な役割を担うようになり、「保甲連合会」が設けられました。これにより、地方の行政事務を支援するための職が創設され、行政の効率化が進められました。保甲は、日本語の普及や風俗の改善、迷信の打破などにも重要な貢献をしました。

感染症対策への寄与

保甲制度は、感染症対策にも重要な役割を果たしました。保正は、感染症患者の報告を義務付けられ、地域の清潔を保つための運動にも参加しました。衛生組合が設置され、地域における感染症対策の強化が図られました。このように、保甲制度は自治体の衛生管理にも寄与しました。

昭和時代の発展と廃止

1943年時点で保甲の総数はさらに増加し、保が6074、甲が58378に達しました。しかし、1945年に「外地同胞処遇改善の方針」に基づき、保甲制度は廃止されることとなりました。総督府による直接的な統治のもとで、台湾社会は変革の時代を迎えたのです。

まとめ

保甲制度は、日本統治時代の台湾において重要な組織のひとつであり、住民の自治や地方行政、感染症対策に寄与しました。その制度は、日本による統治の下で実施されたものですが、台湾社会においては多くの面で社会に貢献したと言えます。

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