信号拳銃

信号拳銃（Flare gun）

信号拳銃は、特定の信号弾を発射するために設計された銃器で、主に航空機への救難信号の送信に用いられます。これにより、救助希望者が周囲の人々に存在を知らせ、救助を求める手段となっているのです。通常この信号弾は空中に放たれ、近くの救助者に発見を促します。加えて、軍事用途にも適用され、歴史的には大日本帝国陸軍が地上部隊との通信手段として利用していた背景があります。

型式

信号拳銃の基本的な形状は、単発の後装式デザインで、短い銃身を持つスナブノーズ型から発射されます。この典型的なモデルは、19世紀のアメリカ海軍士官エドワード・ウィルソン・ベリーによって開発され、オリジナルの名称「ベリーピストル」として広まりました。これらの拳銃はシングルアクションで動作し、センターファイア式の点火機構を持っています。近年の製品は、多くが明るい色合いで耐久性のある素材から作られ、旧式のモデルは通常口径が2.54cm（1インチ）ですが、最近のモデルはより小さな12ゲージの信号弾を使用することが一般的です。

信号拳銃は、緊急時に救助を求めるためにも利用されます。この場合、信号弾は真上に発射されて、できるだけ長時間視認できるよう工夫されています。また、民間の救助用に使われることが多いモデルは、使い捨てのチューブ式になっていることが多く、点火の仕組みとしてはねじったり、叩くことで作動します。日本では、一定の規制の下で産業用として所持が許可されています。

効果

日本陸軍が運用していた十年式信号拳銃では、発煙弾と彩光弾が使用され、昼間の視認を助ける役割を持っていました。発煙弾は約15秒間煙を出し、視認距離は最大で4,000mでした。彩光弾は夜間には12,000mまで遠くから視認されることができ、昼間でも2,500mの距離から確認可能でした。これらの信号弾は天候や明るさに応じてその効果が変化し、晴天で太陽が背面にある状況が最も視認しやすくなっています。

兵器としての利用

第二次世界大戦中には、ドイツ軍が信号拳銃から撃ち出せる榴弾を製作した例も見られます。カンプピストーレは、口径26.6mmの榴弾を発射するように改造され、さらにシュトゥルムピストーレでは、特別な効果を持つ対戦車榴弾が発射可能です。これらのモデルは特に重いグレネードを扱う際の反動が強いため、肩当てを用いる必要がありました。

信号拳銃が全く武器として意図されていなかった状況でも、戦争中には武器として使われることもありました。例えば、1942年、ウェールズのペンブリー飛行場で誤って不時着したドイツ人パイロットを捕えるために信号拳銃が活用されたというエピソードが伝えられています。

事故と文化

信号拳銃は時に事故を引き起こすこともあり、1971年にはスイスで発生したモントルー・ジャズ・フェスティバルで、観客が誤って照明弾を発射し、カジノの天井に引火するという事件がありました。この事件は、その後ディープ・パープルの楽曲「スモーク・オン・ザ・ウォーター」にも影響を与えました。

信号拳銃は、緊急時や特異な場面での使われ方から文化的意義まで、幅広い側面を持つ非常に興味深い銃器と言えるでしょう。その独特の利用方法と歴史的背景は、知識として知っておく価値があります。

もう一度検索