信太森葛葉稲荷神社

信太森葛葉稲荷神社：安倍晴明と葛の葉伝説が息づく歴史と自然の聖地

大阪府和泉市葛の葉町に鎮座する信太森葛葉稲荷神社は、正式には信太森神社と称される歴史深い神社です。通称として葛葉稲荷神社の名でも広く知られています。旧社格は村社で、日本七社（日本七稲荷）や関西三大稲荷の一つに数えられることもあります。

霊験あらたかな由緒

神社の起源は、元々は聖神社の末社であった「若御前ノ宮」を、地元の庄屋、森田氏が屋敷神として祀ったことに遡ります。1740年頃には稲荷神を勧請し、現在の「信太森葛葉稲荷神社」となりました。森田氏個人の所有地内に建立された神社であり、神道系の吉田家、白川家などには属さず、土御門家の門下にも入らなかった点が特徴です。

「葛葉」という名称は、元禄歌舞伎の影響を受けて名付けられたとされています。歌舞伎『葛の葉子別れ』で有名な白狐の古巣を想起させることから、森田氏が同作を元に、自家の庭先に神社を建立したのではないかと推測する説もあります。

多くの神々を祀る境内

境内には、主祭神である宇迦御魂神をはじめ、大己貴命、大宮姫命・素盞男命、猿田彦命、若宮葛ノ葉姫など、数多くの神々が祀られています。

1898年（明治31年）に再建された本殿は、老朽化のため2008年（平成20年）に改修されています。本殿内には、白狐石や御霊石のほか、和泉式部や松尾芭蕉の歌碑も残されています。特に、みたま石は、葛の葉が正体を知られ、安倍保名の元を去り、悲しみながらこの地で石になったと伝えられる霊石です。

境内には、樹齢2000年と推定される楠の大木「千枝の楠」がそびえ立ちます。花山天皇の熊野行幸の際に「千枝の楠」と命名され、清少納言の『枕草子』にも登場する名木です。根本から二つに分かれていることから「夫婦楠」とも呼ばれ、夫婦円満のご利益があるとされています。葛の葉はこの楠から現れたと伝えられています。

その他、狐の碑、姿見の井戸（葛の葉が姿を確認したとされる井戸）、子安石（安倍晴明が遥拝したとされる子宝・安産祈願の石）、千利休作と伝わるふくろうの灯篭など、数多くの見どころがあります。本殿裏手には、かつて滝があったとされる滝行場跡も残されています。

また、境内には多くの末社が点在し、学問成就、良縁祈願、安産祈願、子宝、夜泣き封じ、交通安全など、多岐にわたるご利益があるとされています。

盛んな祭事

年間を通して様々な祭事が行われ、地域の人々との深い結びつきを感じることができます。初詣、節分祭、初午大祭、秋祭（だんじり祭り）、新穀感謝祭など、季節の移ろいと共に賑わいを見せます。

アクセスと周辺情報

JR阪和線北信太駅から徒歩数分の場所に位置し、駅西口から続く参道には4基の鳥居が建ち並んでいます。境内では、くず餅などの土産物を販売する店もあります。

信太森葛葉稲荷神社は、歴史、文化、自然が融合した、多くの魅力を持つ場所です。安倍晴明や葛の葉伝説に思いを馳せながら、静寂な空間の中で、ゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。

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