信州紬

信州紬（しんしゅうつむぎ）

信州紬は、長野県全域で生産される織物の総称です。1975年に経済産業大臣（当時の通商産業大臣）によって伝統的工芸品に指定されました。地域によって多様な種類があり、「松本紬」「上田紬」「飯田紬」「伊那紬」「有明紬（あづみの紬）」「山繭紬」「絁（あし）紬」「絓（しけ）紬」などと呼ばれています。

歴史

信州紬の歴史は、江戸時代初期に各藩が産業政策として養蚕を奨励したことに始まります。信濃（現在の長野県）各地で養蚕が盛んになり、屑繭を原料とする紬は、原料の生産地がそのまま織物の生産地となりました。1750年（寛延3年）には京都への出荷が始まり、明治時代に至るまで毎年のように出荷されました。特に上田紬は、上田藩の奨励もあって井原西鶴の『日本永代蔵』などの文芸作品にも登場し、化政文化の頃に最盛期を迎えました。

信濃では、草木染めの材料となる植物が豊富に自生していたことから、養蚕と並行して草木染めの技法も普及しました。しかし、安政の開国後に生糸が高騰すると衰退し、昭和中期までは技術保存の名目で細々と技術伝承が行われるのみとなりました。

1952年、紬織物の復興が計画され、県をはじめとする自治体の振興策によって、県下全域で活発な生産が行われるようになり、現在に至っています。

伝統的な技術・技法

信州紬は、以下の技術・技法を用いて製織されます。

織り方: 先染めの平織り
糸:
たて糸：生糸（山繭系を含む）、玉糸、または真綿の手つむぎ糸
よこ糸：玉糸、または真綿の手つむぎ糸
よこ糸の打ち込み: 手投杼（てなげび）を使用
絣糸の染色: 手くくりによる


使用する糸は、生糸（山繭系を含む）、玉糸または真綿の手つむぎ糸です。

製造地域

信州紬は、以下の地域で製造されています。

長野県長野市、松本市、上田市、岡谷市、飯田市、須坂市、小諸市、駒ヶ根市、塩尻市、佐久市、千曲市、東御市、安曇野市、南佐久郡佐久穂町、諏訪郡下諏訪町、下伊那郡高森町、東筑摩郡生坂村、北安曇郡松川村、埴科郡坂城町、下水内郡栄村

特徴

信州紬の特徴は、以下の点が挙げられます。

原材料の種類が豊富であること
自生する植物を使った草木染めを活用していること
縞、格子、絣、またはそれらの混成、無地調子など、柄の構成が多様であること
他産地にはない「山繭」を使用した天蚕糸を使用するものがあること

工程

信州紬の主な工程は以下の通りです。

煮繭、絹の精錬 - 真綿づくり - 手紡ぎ - 染色 - 絣技法 - 製織

規模

企業数: 17社（平成14年調査）
従業員数: 105人（平成14年調査）
* 伝統工芸士（総登録）: 27人（2003年2月25日現在）

信州紬は、その豊かな歴史と多様な技術によって、現在も長野県の伝統工芸を代表する織物として受け継がれています。

もう一度検索