信藤整

信藤整：激動の時代を駆け抜けた実業家

信藤整（のぶとう おさむ、1932年 - 2017年11月26日）は、日本の経済界、スポーツ界に足跡を残した人物です。マツダ株式会社で技術者としてキャリアをスタートさせ、その後、経営者として手腕を発揮しました。特に、マツダ副社長、そしてJリーグ・サンフレッチェ広島の社長としての功績は、多くの人々に記憶されています。

ロータリーエンジン開発からアメリカ工場設立へ

信藤はマツダ入社後、ロータリーエンジンの開発に携わるなど、技術者としてその才能を発揮しました。1985年には、マツダが単独出資したアメリカ生産会社「マツダ・モーター・マニュファクチャリング・USA・コーポレーション」(MMUC)の初代社長に就任。操業開始を前にした1986年秋に渡米し、現地での工場設立に尽力しました。

しかし、アメリカでの挑戦は困難を極めました。全米自動車労組との労働協約締結は、労使協調を目指す上での大きな一歩でしたが、マツダ式生産手法の定着は難航し、生産量は伸び悩みました。1990年に帰国後、マツダ副社長に就任し、本社経営に携わりました。

サンフレッチェ広島社長としてクラブ再建に尽力

1995年6月、信藤はサンフレッチェ広島の社長に就任しました。当時のJリーグはバブル崩壊の影響を受け、多くのクラブが経営難に苦しんでいました。サンフレッチェ広島も例外ではなく、親会社であるマツダからの十分な支援も期待できない状況でした。

信藤は、クラブの経営スリム化に乗り出しました。1997年11月には、選手年俸の大幅減額や主力選手の放出を含む経営改革を発表。この改革は、サポーターからの強い反発を招き、信藤自身も厳しい批判にさらされました。しかし、この思い切った改革が、クラブ消滅の危機を救ったとも評価されています。

1998年6月、信藤は社長を退任しましたが、彼の改革は他クラブにも影響を与え、Jリーグ全体の経営改善を促すきっかけとなりました。後任の久保允誉も「主力の移籍や年俸の削減がなければ、経営はもっと深刻なものになったはず」と評価しています。

評価と教訓

信藤整は、常に時代の変化に対応し、困難な状況に立ち向かってきました。ロータリーエンジン開発、アメリカ工場設立、そしてサンフレッチェ広島の経営改革と、その足跡は多岐にわたります。彼の経験は、現代の経営者にとっても多くの示唆を与えてくれます。

彼の功績は、単に企業やクラブの業績を向上させたことだけではありません。組織の変革を恐れず、大胆な決断を下す勇気、そして、批判を恐れず信念を貫く姿勢は、多くの人々に感銘を与えました。

信藤整は、2017年11月26日に逝去されましたが、彼の残した功績は、これからも多くの人々に語り継がれていくことでしょう。

関連情報

「日米外交の人間史 : 黒船から経済摩擦まで」(越智道雄著、中央公論新社発行)ISBN 4121501101
「国際事業の企業家精神―先駆者21人のドキュメント」(高橋浩夫編著、中央経済社発行)ISBN 4502524913
中国新聞マツダ特集・サンフレ支援　揺れる心 - ウェイバックマシン
広島経済大学・学ぶ会報告書 - p. 76以降参照

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