信貴山電鉄デ5形電車

信貴山電鉄デ5形電車

信貴山電鉄デ5形電車は、1930年（昭和5年）の信貴山電鉄（後の信貴山急行電鉄）開業に合わせて日本車輌製造で製造された電車です。5〜7号車の3両が存在しました。信貴山電鉄の鉄道線は、ケーブルカーで山上に至る特殊な孤立路線であり、その地形から非常に厳しい勾配と起伏がありました。

車両の特徴

デ5形は全長約14mと短い車体ながら、急勾配に対応するため、通常のブレーキに加え、非常用としてカーボランダムブレーキを搭載していました。これは、ブレーキシューを線路に押し付けて停車させる特殊なものでした。また、台車は鋳物製のフレームで、軸箱を両側からばねで抑える構造を採用していました。

外観上の特徴としては、窓の上部に丸みを帯びた、いわゆる「ニコニコ窓」が採用されていました。

開業から終焉まで

開業時には、鋼索線を利用して車両を山上まで運び込むという特殊な措置が取られました。しかし、デ6は1937年（昭和12年）に走行中に谷底へ転落し大破、廃車となってしまいます。残る2両は鉄道線が休止されるまで使用され、その後鋼索線を使って山を下り、近鉄南大阪線へ転属、モ5251形（5251・5252）と形式を改めました。

さらに1946年（昭和21年）には伊賀線へ移動し、台車を他車発生品の通常型イコライザー式に交換。1977年（昭和52年）まで同線で使用されました。当時の伊賀線では、荷物室を持たない唯一の車両として異彩を放っていました。

主要諸元

車体構造：半鋼製
最大寸法（長さ×幅×高さ）：14,260mm×2,650mm×3,795mm
自重：33.0t
定員：90人（座席42人）
主電動機：MB-64-C(60kW)×4
駆動方式：吊掛式
制御方式：HL
制動方式：AMA自動空気ブレーキ、手ブレーキ、カーボランダムブレーキ
台車：住友KS-85L

参考文献

電気車研究会『鉄道ピクトリアル』1964年5月号（通巻157号）山崎寛 失われた鉄道・軌道を訪ねて〔16〕信貴山急行電鉄
交友社『私鉄電車のアルバム 1 戦前・戦後の古豪』1981年 p.150-151

関連項目

近畿日本鉄道の車両形式

もう一度検索