俵浩三

景観学および林学を専門とした日本の学者、俵 浩三（たわら ひろみ）は、1930年5月11日に東京都台東区に生まれ、2020年11月30日にその生涯を終えました。専修大学北海道短期大学名誉教授であり、北海道大学より学術博士号を授与されています。

経歴

俵氏は、旧制の東京都立上野中学校を1948年に卒業後、千葉大学園芸学部で学び、1953年に卒業しました。同年、厚生省国立公園部に入省。中部山岳国立公園管理官に着任し、「国立公園レンジャー第1号」として、国立公園の現場管理という新たな職務の礎を築きました。その後、支笏洞爺国立公園管理官を経て、1959年からは北海道林務部技師として北海道へ移ります。

北海道庁では、長年にわたり自然公園行政および自然保護行政の要職を歴任しました。1967年には自然公園計画係長として計画策定に携わり、1969年には阿寒国立公園管理事務所長として再び現場の管理運営を担いました。1971年には北海道生活環境部自然保護課長補佐として行政の中枢で働き、1977年からは野幌森林公園事務所長、後に管理部長として、広大な道立自然公園の管理運営を指揮しました。

行政官としての功績が認められ、1980年には国立公園協会より第1回田村賞を受賞しています。

1983年、俵氏は教育研究の世界へ転じ、専修大学北海道短期大学の造園林学科教授に就任しました。大学では、学科長（1985年〜1991年）や図書館長（1992年〜1998年）などの要職を務めながら、後進の育成に力を注ぎました。2001年に同大学を退職し、名誉教授の称号を授与されました。

研究と業績

長年の行政経験と現場での知見に基づき、北海道における公園整備や自然保護の歴史、思想に関する研究を進めました。その集大成として、「北海道における公園と自然保護の発達に関する研究」により、1989年に北海道大学から学術博士号を取得しています。この研究成果は、日本の造園学分野においても高く評価され、1990年には日本造園学会賞（研究論文部門）を受賞しました。また、2002年には、造園分野の権威である上原敬二の名を冠した上原敬二賞を受賞するなど、その学術的貢献は広く認められています。

社会活動

北海道の自然保護に対する深い情熱から、行政や教育の立場を超えて、地域社会での活動にも積極的に参加しました。1984年から2008年まで北海道自然保護協会の理事を務め、1994年から2004年には同協会の会長として、市民レベルでの自然保護や景観保全の啓発活動を推進しました。

著作

幅広い知識と経験をもとに、多数の著書や共編著を世に送り出しています。主なものとしては、国立公園レンジャー時代の経験や北海道の自然の魅力を紹介した『北海道の自然美を訪ねて』（1963年）や、北海道の自然保護の歴史を論じた『北の風土 北海道自然保護小史』（1977年）、『北海道の自然保護 その歴史と思想』（1979年、1981年増補版）があります。また、緑と人間の関わりを歴史的に考察した『緑の文化史 自然と人間のかかわりを考える』（1991年）、北海道の緑の環境史を通観した『北海道・緑の環境史』（2008年）など、専門分野における重要な著作を残しています。その他、牧野富太郎に関する考察を記した『牧野植物図鑑の謎』（1999年）や、共編著として『北海道の山』（1971年）などがあります。

俵浩三氏は、国立公園の現場から始まり、北海道の自然保護行政、大学での教育研究、そして市民活動に至るまで、多角的な視点から日本の、特に北海道の自然環境の保全と景観の創造に生涯をかけて貢献した人物です。

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