俵萌子

俵萠子（たわら もえこ）は、1930年12月7日に大阪府大阪市で生まれ、2008年11月27日に77歳でその生涯を閉じました。彼女は評論家、エッセイストとして、日本の社会問題に深く関わり、特に女性、家庭、老人、教育といったテーマに焦点を当てた活動で知られています。

生い立ちと経歴

建築家の中野順次郎を父に持ち、本名を中野萌子として生まれた俵萠子は、大阪府立大手前高等学校、大阪外国語大学フランス語学科を卒業後、産経新聞社に入社しました。1965年に同社を退社し、その後は評論家としての道を歩み始めます。彼女の活動は、単に文章を著すだけでなく、社会運動にも及びました。

社会活動と政治への関与

俵萠子は、東京・中野区の教育委員を務め、教育問題にも積極的に関与しました。また、国政への進出も試み、1977年の参議院議員選挙に東京都選挙区から立候補しましたが、落選しました。1990年には衆議院議員選挙への立候補も検討されましたが、党内の混乱により実現には至りませんでした。これらの経験から、俵は政党や政治活動から距離を置くようになります。

文化・芸術活動

1986年から陶芸を始めた俵萠子は、1995年に群馬県に自身の美術館『俵萠子美術館』を設立しました。芸術への情熱は、彼女の多才さを示す一例です。

がん患者支援

乳がんを患った経験から、2001年には「1・2の3で温泉に入る会」を設立し、乳房を失った女性たちの交流を深める場を提供しました。また、2006年からはがん患者団体支援機構の理事長も務めるなど、がん患者への支援活動にも力を注ぎました。

私生活

産経新聞社の同僚であった俵孝太郎と結婚し、一男一女をもうけましたが、後に離婚しました。離婚後も旧姓の中野に戻りましたが、筆名としては「俵」を使用し続けました。彼女の女性の権利尊重や住民参加を求める姿勢は、保守派の論客として活動する元夫とは対照的でした。

著書

俵萠子は、数多くの著書を執筆しました。初期の著作には、共働き家庭の育児体験を綴った『ママ、日曜でありがとう 体当り共稼ぎ育児レポ』（1964年）があり、子育てに関する社会的な課題を提起しました。また、『どぎまぎ性教育―娘と息子に試みたこと』（1979年）では、性教育の重要性を訴えました。教育に関する著書としては、『俵萌子の教育委員日記』（1983年）や『教師にのぞむこと―いじめ、体罰、管理教育をなくすには』（1986年）があり、当時の教育現場が抱える問題に深く切り込んでいます。晩年には、『命を輝かせて生きる―わたしの選んだ第二の人生』（1996年）や『新装版 -子どもの世話にならずに死ぬ方法』（2009年）を発表し、自身の人生観や老後への考え方を語りました。これらの著作は、彼女の幅広い関心と深い洞察力を示しています。

晩年

俵萠子は2008年11月27日に肺炎のため亡くなりましたが、彼女の功績は今もなお、多くの人々に影響を与え続けています。彼女が設立した『俵萠子美術館』は、彼女の死後、閉館となりましたが、彼女の遺した思想や活動は、彼女の著書や活動を通して、後世に語り継がれるでしょう。

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