個別原価計算

個別原価計算の概要

定義と目的

個別原価計算（こべつげんかけいさん）とは、各製品ごとに精密に原価を集計するための会計手法です。特に船舶や特注機械、建設工事などの受注生産において重要な役割を果たしています。この方法では、製品を製造する際に発生するすべてのコストが追跡され、集約されます。対照的に、一般的な大量生産では総合原価計算が使用され、個別原価計算が必要とされる場面は限られます。

歴史的背景

19世紀半ばの産業革命以降、工業製品の価格設定が企業にとって重要な課題となりました。製品の販売価格を設定するためには、それに相応する製造コストを明確に把握しておく必要があります。そのため、費用を記録し集計する手法として複式簿記が採用されました。20世紀初頭には同規格品の大量生産へと移行し、個別原価計算の複雑さや管理コストの増大が問題視されるようになりました。このため、従来の手法に替わって総合原価計算が考案され、多くの工場で導入されるようになりました。しかし、依然として特注の製品や受注生産において個別原価計算は利用されています。

計算手続き

原価計算票の作成

個別原価計算の第一歩は、原価計算票の作成です。これには、製造指図書の番号や得意先名、製品の名称、数量、製造指図書の発行日、着手日、完成日、引き渡し予定日などの情報が記載されます。また、直接材料費や労務費、経費、製造間接費の項目も含まれます。製造前の段階で予想されるコストを要約欄に記入し、製造過程を通じて実績額と比較することで差異を管理します。

製造直接費の計測

製造直接費には、直接的にどの製品の製造に関連するかが明確な費用が含まれます。この費用は製品ごとに集計され、賦課または直課の方法で適切に記録されます。例えば、直接材料費や直接労務費が発生した際にはその詳細を原価計算票に記入します。

製造間接費の配分

一方、製造間接費は特定の製品にどれだけかかっているかが明確ではないため、一定の基準に基づいて配分されます。例えば、直接作業時間を基に算出する配賦率を用いて、各製品に対して間接費が配分されます。この手法では、製品の製造にかかる時間を考慮に入れることで、より正確な原価管理が可能となります。

製品完成とコストフロー

製品が完成した際には、原価計算票に実績額を記入し、販売原価に振り替えられます。製造直接費や製造間接費は、一旦資産勘定に記帳された後、製品勘定に振り替えられ、実際の売上が発生した際に売上原価として計上されます。

まとめ

個別原価計算は、特注品や受注生産の分野において、詳細な原価集計を必要とする際に非常に重要な役割を果たします。この手法を適切に用いることで、各製品に対するコストの透明性が向上し、経営判断に大いに寄与することができます。

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