個別指導

個別指導（こべつしどう）

教育の現場において用いられる指導形態の一つで、主に教える側である教師と学ぶ側である生徒との関わる人数に焦点を当てて区分される言葉です。教師が多くの生徒に対して同時に教える「一斉授業」とは異なり、より少ない人数、特に一人の生徒に対して集中的に行われる指導を指します。

この指導形式は、生徒一人ひとりの学習ペースや理解度、興味関心に合わせて内容や進度を柔軟に調整できる点が大きな特徴です。個々の生徒が抱える疑問や苦手な部分にきめ細やかに対応できるため、深い理解や確実な定着を促しやすいとされています。また、生徒は周囲を気にすることなく自由に質問しやすく、教師との間に信頼関係を築きやすいというメリットもあります。

個別指導と一斉授業の中間に位置するのが「少人数指導」です。これは、一斉授業ほど大人数ではなく、個別指導ほど一人に特化しない、文字通り比較的少人数のグループに対して行われる指導形態です。どの形式を選択するかは、教育目標、対象となる生徒の特性、利用できる資源などによって異なりますが、生徒の個別ニーズへの対応度という点で個別指導は最も手厚い形態と言えます。

歴史的背景

近代的な公教育制度が普及する以前、特に近世ヨーロッパの貴族や上流階級の間では、学校に通わせるのではなく、家庭に専門の教師（家庭教師、ガヴァネスなど）を招いて教育を行うことが一般的でした。これは現代の視点から見れば、まさに個別指導の原型とも言える形態です。

フランス革命以降、国家による公的な教育システムが徐々に整備され、多くの国民が学校で学ぶ機会を得るようになります。これにより、一度に多数の生徒を教える一斉授業が教育の主流となっていきました。しかし、家庭教師による個別教育の伝統は、特に質の高い教育を求める層の間で形を変えながら引き継がれていきました。

イギリス経験論の哲学者であるジョン・ロックが著した『教育についての考察』は、当時のこうした家庭での個別教育を念頭に置いて書かれた教育論です。ロックは、子供一人ひとりの資質や個性を尊重し、それぞれの状況に合わせた教育を行うことの重要性を説いており、これは現代の個別指導の考え方にも通じる要素を含んでいます。家庭教育を前提とした教育論として、その時代の教育思想においてユニークな位置を占めています。

現代においては、学習塾や予備校における指導、家庭教師派遣サービス、あるいは学校内での補習や特別支援教育など、様々な場面で個別指導やそれに近い形態が活用されています。生徒一人ひとりの学力向上や目標達成に向けて、その有効性が認識されています。

関連項目

学習塾
教育方法学

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