倫敦の人狼

『倫敦の人狼』の概要

『倫敦の人狼』（原題：Werewolf of London）は、ユニバーサル映画が制作し、1935年5月13日に公開された白黒のアメリカ映画です。本作は75分の上映時間で、狼男をテーマにした初期の映画の一つであり、現在残っている作品の中では最も古いものとされています。

特殊メイクの裏側

本作では、特殊メイクをジャック・ピアスが担当しました。彼は後に有名な映画『フランケンシュタイン』（1931年）でもメイクを手掛けた技術者です。初めは、「表情を分かりにくくすべき」といった少数派の意見を考慮したために、彼が考案した最初のメイク案は却下されました。このアイデアはのちに『狼男』に転用されます。また、主演のヘンリー・ハルは最初のメイクに不満があったため、最終的に改良が施されます。具体的には、最初のメイクが過度に動物的であると感じたハルが、映画の製作に関わるカール・レムリ・Jr.に訴えかけ、変更が行われました。結果的に、この映画における狼男のメイクは、後の作品で施されたものに気味悪さを加えた印象を持たれることとなります。

音声と背景

狼男の吠え声については、実際のオオカミの鳴き声とヘンリー・ハルの叫び声を組み合わせるという手法が用いられており、この組み合わせは特に珍しい方法でした。興味深いことに、冒頭の村人たちの会話は「チベット語」とされていますが、実際には広東語が使われています。

あらすじ

映画のストーリーは、著名な植物学者のグレンドン博士が主役です。彼は、「狼憑き」と呼ばれる病気の治療薬となる「狼草」を求めてチベット高原に訪れます。雇った助手や労働者たちが恐れを感じる中、博士はついに「狼草」を見つけますが、その直後に一匹の狼に噛まれてしまいます。帰国後、博士は植物展覧会を開催し、ここに謎めいたアジア人学者のヨガミ博士が現れます。彼は「狼憑き」の患者がロンドンにいるとし、「狼草」を手に入れようと博士を襲ってきます。

その後、グレンドン博士は「狼憑き」の症状が現れ、正気を保てずに自宅を離れ、貧民街をさまよいながら「狼草」が咲く時を待ちます。「狼草」が花を開くと、博士は研究室でヨガミ博士と対峙し、命をかけた殺し合いが展開されます。最後にヨガミ博士を殺した後、グレンドン博士はフォーサイス大佐に射殺され、これで「狼憑き」から解放されることになります。

キャスト

この映画のキャストには、以下のような俳優が含まれています。

• - グレンドン博士：ヘンリー・ハル（日本語吹替：中村正／石塚運昇）
• - ヨガミ博士：ワーナー・オーランド
• - Lisa Glendon：ヴァレリー・ホブソン（日本語吹替：水城蘭子）
• - Paul Ames：レスター・マシューズ
• - フォーサイス大佐：ローレンス・グラント
• - その他、様々なキャラクターが登場する。

文化的影響

『倫敦の人狼』は、1978年にウォーレン・ジヴォンが発表したヒット曲「ロンドンのオオカミ男」にも影響を与えています。この曲は、エヴァリー・ブラザーズのフィル・エヴァリーが映画を見たことに由来しています。また、1981年の映画『狼男アメリカン』も本作からインスパイアを受けています。日本の漫画家水木しげるは、『東西妖怪図絵』の中で本作の狼男を見本にしたイラストを描いています。

まとめ

『倫敦の人狼』は、歴史的意義を持つ映画であり、多くの現在のホラー映画に影響を与えた重要な作品です。そのユニークなプロットや特殊メイクは、今見ても楽しめる魅力があります。

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