倭の六県

倭の六県について

倭の六県（やまとのむつのあがた）は、古代の大和国で大王（皇室）が直接支配していた地域を指します。645年に行われた造籍（戸籍作成）や校田（田畝調査）によって、当時の行政制度の一端が見えるようになりました。この六つの県は、『和名類聚抄』に見られるそれぞれの郡域を反映した名称です。具体的には、曽布（添）県、山辺県、磯城（志貴）県、十市県、高市県、葛城県の六つが挙げられます。

各県には、県名を冠した式内社が存在し、これらの神社は現在でも地域の文化や信仰と強く結びついています。具体的な神社としては、奈良市にある添御県坐神社、天理市の山邊御県坐神社、桜井市の志貴御県坐神社、橿原市の十市御縣坐神社、および高市御県神社、葛木御県神社などがあります。これらの神社は、地域の歴史を色濃く反映しており、訪れる人々に古代の雰囲気を感じさせてくれます。

また、『延喜式』には27篇の祝詞の一部として、倭の六県に関連する「六の御県」という名前が挙げられており、祈年祭では蔬菜を献上する記録も残されています。これは、当時の地域社会において農業が重要な役割を果たしていたことを示しています。2700年以上前の奈良盆地では、今よりもはるかに小規模で、農業によって営まれる生活があったのです。

624年には、蘇我馬子が推古天皇に葛城県を「封県」にするよう求めた際、その地域が蘇我氏の本居であり、蘇我氏の名前の由来ともなっていることを理由に挙げました。しかし、この提案は血統に基づく王権により拒絶されました。これにより、古代における権力の争いと、地域政治の重要性が浮き彫りになります。

以上のように、倭の六県は単なる地名を越えて、古代の人々の生活や信仰、政治的背景を反映する重要な遺産です。これらの地域を訪れることで、当時の文化や歴史を学び、感じることができます。近年でも観光地として人気があり、訪れる人々はその豊かな歴史と文化に触れることができるでしょう。古代の面影を留める倭の六県は、今も多くの人々に興味を持たれ続けています。

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