停学

停学処分：日本とアメリカにおける制度と現状

停学処分の定義

停学とは、生徒が学校における通常の授業への参加を一時的に禁止される懲戒処分です。生徒の規律違反や問題行動への対応として、教育機関によって実施されます。その期間や適用基準は国や学校によって異なります。

日本における停学処分

日本の学校教育法施行規則では、停学は生徒に対する懲戒処罰の一つとして位置付けられています。ただし、学齢児童・生徒に対する停学は、教育を受ける権利の不当な剥奪とみなされるため、原則として認められていません。私立学校では、「特別指導」などの名目で同様の処分が行われるケースもありますが、生徒への弁明機会の保障や親権者への配慮が求められます。

停学事由としては、校則違反（バイク通学、飲酒・喫煙、窃盗、暴力行為、カンニングなど）、いじめ行為などが挙げられます。違反の程度によって、数日から無期限まで期間が変動します。特に、いじめなど重大な行為で被害者が自殺や転校に追い込まれた場合は、加害者に対して無期限の停学処分が科される可能性があります。夜間中学などでは、16歳以上の生徒に対しては、高校生や大学生と同様に停学処分が適用されます。

学校教育法以外の教育機関においても、停学処分が実施される場合があります（例：競馬学校）。

アメリカにおける停学処分

アメリカでは、義務教育段階でも停学処分が科せられます。大きく分けて、学内停学（In-School Suspension：ISS）と学外停学（Out-of-School Suspension：OSS）の2種類があります。ISSは、通常の授業とは別の場所で指導を受ける処分であり、OSSは学校への出入りを禁止する処分です。

1990年代以降、アメリカの生徒指導では、「ゼロトレランス(zero tolerance)」と呼ばれる厳格な対応と、停学・退学になった生徒のための「オルタナティブスクール(AS)」の整備が並行して進められています。ゼロトレランスでは、段階的なルールに基づき、重大な違反には停学や退学などの厳しい処分が科されます。OSS処分を受けた生徒は、オルタナティブスクールで教育を受けることが一般的です。ミシシッピ州では、銃器の所持を除き、停学・退学処分を受けた生徒に対してオルタナティブスクールへの通学を義務付けています。

しかし、2002年の「落ちこぼれ防止（No Child Left Behind）」法の制定以降、停学・退学処分には慎重さが求められるようになり、公立学校における停学・退学の件数は減少傾向にあります。

停学処分に関する考察

停学処分は、生徒の教育を一時的に中断させるため、生徒の学習機会の損失や社会的な影響を考慮する必要があります。また、処分は公平かつ透明性を持って実施され、生徒には弁明の機会が保障されるべきです。特に、いじめや暴力行為など、重大な問題行動に対しては、再発防止策を含めた適切な対応が不可欠です。日本とアメリカでは、教育制度や社会背景の違いから、停学処分の運用やその効果についても異なる側面があります。それぞれの国の教育環境や生徒の権利を尊重した上で、効果的で適切な生徒指導のあり方が模索されています。近年は、生徒の権利擁護の観点から、停学処分の適正な運用に関する議論が活発化しており、今後もそのあり方が変化していく可能性があります。教育現場では、生徒の更生と育成を目的とした、より柔軟で多様な対応策の開発と導入が求められています。

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