健全財政

健全財政とは

健全財政とは、財政がその目的とする3つの機能、すなわち「資源配分機能」「所得再分配機能」「経済の安定化機能」を持続的に果たしている状態を指します。これらの機能がバランス良く実現されていることが、国民生活の安定と経済の発展に不可欠です。

財政が果たすべき3つの機能

1. 資源配分機能

民間の経済活動だけでは十分に満たせない公共的な需要に対し、資源を適切に配分する機能です。具体的には、以下の分野における公共財・サービスの供給を指します。

社会資本: ダムや堤防など、不特定多数が利益を得るため、民間での供給が難しいもの。
公共サービス: 警察、国防、水道など、国家の安定や国民生活に不可欠なサービス。
インフラストラクチャー: 道路や鉄道など、効率的な結合が必要だが、特定の民間事業者による独占が不適切なもの。

2. 所得再分配機能

政府の収入と支出を通じて、個人間の所得格差を一定範囲内に収めるように調整する機能です。

累進課税: 所得税や相続税において、高所得者や富裕層に重い税負担を課す。
社会保障給付: 生活保護費や年金などを通じて、低所得者や社会的弱者への支援を強化する。

ただし、消費税は低所得者ほど負担が重くなる逆進性を持つため、所得再分配機能とは逆行する側面があります。

3. 経済の安定化機能

景気の変動をできるだけ抑制し、安定的な経済成長を実現することで、国の経済的地位と軍事的地位を維持・向上させる機能です。

景気調整: 好況時には税負担を増やして投資や消費を抑制し、不況時には政府支出を増やしたり減税を実施して需要を喚起する。
自動安定化装置: 累進課税制度などが、景気の過熱や落ち込みを自動的に緩和する。

財政破綻との関係

財政破綻とは、政府が債務不履行に陥る状態、つまり国債などの利払いや元本償還ができなくなることを指します。自国通貨建てで国債を発行している限り、政府は財政破綻しないという考え方があります。財源不足が発生した場合でも、政府が政府貨幣を発行するか、自国通貨建ての国債を発行して賄っている限りは、財政破綻は起こりません。

財政の健全度を測る指標

1. 資源配分機能の評価指標

土地の価格（ヘドニック・アプローチ）: 公共財・サービスの価値が高いほど土地の価格が高くなるという考え方に基づきます。

2. 所得再分配機能の評価指標

ジニ係数: 所得分配の不平等度を示す指標で、0に近いほど平等、1に近いほど不平等です。

3. 経済の安定化機能の評価指標

景気動向指数: 景気の現状や先行きを示す指標。
実質経済成長率: 物価変動の影響を除いた経済成長の指標。

注意点

基礎的財政収支（プライマリーバランス）は、財政の健全度を測る定量指標にはなりません。税収を最大化し、政策的経費の支出を最小化してプライマリーバランスを黒字化することは、財政の機能を損ない、健全性を悪化させる可能性があります。

健全財政に関する現行法

財政法第4条1項: 歳出は公債または借入金以外の歳入を財源とすることを原則としています。
* 財務省設置法第3条1項: 財務省は、健全な財政の確保を使命としています。

健全財政は、持続可能な社会と経済の発展に不可欠な要素です。財政の機能を適切に理解し、健全性を維持するための努力が求められます。

もう一度検索