偪

偪（ひき）

概要

偪（ひき）は、古代中国の周代に存在したとされる諸侯国の一つです。具体的な位置については史料が乏しく、正確な場所は特定されていません。しかし、『春秋左氏伝』などの文献から、南燕（なんえん）、密須（みっしゅ）、闞（かん）といった諸侯国と同族であり、姞（きつ）姓であったことがわかっています。

歴史

偪に関する記録は非常に限られていますが、『春秋左氏伝』の文公六年（紀元前621年）の記述にその名を見ることができます。この記述では、「杜祁（とき）が君主の縁故をもって、偪姞（ひききつ）に譲り、上位につけた」と記されています。このことから、偪姞が当時一定の地位を有していたことが窺えます。

偪姞について

偪姞は、春秋時代の五覇の一人である晋の文公の妻であり、晋の襄公（じょうこう）の生母にあたる人物です。彼女は偪の出身であり、その出自の高さから晋の文公の夫人となったと考えられています。彼女の存在は、偪という国が周王朝において一定の地位を占めていたことを示す傍証となります。

考察

偪という国は、史料の不足からその詳細な歴史や政治体制は不明な点が多く残されています。しかし、南燕や密須、闞といった同族の国々と並び称されることから、一定の勢力を持っていたと考えられます。また、偪姞が晋の文公の妻になったことは、当時の国際関係における重要な出来事であり、各国の政治的な思惑が複雑に絡み合っていたことを示唆しています。

今後、新たな史料の発見や研究の進展によって、偪の実態がより明らかになることが期待されます。

参考文献

『春秋左氏伝』
『中国歴史大辞典』

関連項目

南燕
密須
* 闞

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