偶然と想像

『偶然と想像』

概要

『偶然と想像』（英題：Wheel of Fortune and Fantasy）は、濱口竜介監督によって2021年に公開されたオムニバス映画で、3つの短編から構成されています。本作は、第71回ベルリン国際映画祭に出品され、見事に銀熊賞（審査員グランプリ）を受賞しました。濱口は前作『寝ても覚めても』以降、複数のプロジェクトを進めていましたが、コロナ禍による影響で本作と長編『ドライブ・マイ・カー』を同時に撮影することになりました。

本作は2021年3月にベルリン国際映画祭で初めて上映され、その後、各国のメディアから高い評価を受けました。特にフランスの映画監督エリック・ロメールの作風を思わせる演技や台詞に定評があり、登場人物の描写や撮影監督飯岡幸子の映像美も注目されました。濱口監督自身もロメールの作品から影響を受けていることを認めています。

2021年10月30日には東京フィルメックスのオープニング作品として日本で初上映され、観客賞を受賞しました。劇場公開が始まると、観客数は4か月で7万人に達しました。また、2022年4月6日からのフランス上映では僅か3週間で10万人以上を記録し、前作を超える成功を収めました。

キャスト

各短編には個性的なキャストが揃っています。

• - 魔法（よりもっと不確か）

- 古川琴音（芽衣子）
- 中島歩（和明）
- 玄理（つぐみ）

• - 扉は開けたままで

- 渋川清彦（瀬川）
- 森郁月（奈緒）
- 甲斐翔真（佐々木）

• - もう一度

- 占部房子（夏子）
- 河井青葉（あや）

各短編のあらすじ

魔法（よりもっと不確か）

ファッションモデルの芽衣子は、撮影スタッフのつぐみと親友です。都心での撮影後、タクシーに乗り込むと、つぐみが最近出会った運命の相手について語り始めます。彼女の相手は若くして成功した企業家で、互いに趣味や価値観がぴったり合い、運命の相手として強い確信を持っています。芽衣子はつぐみの話に喜びを感じつつ、彼女を自宅前で降ろすと、運転手に後戻りするよう指示します。オフィスに着くと古い知り合いと再会し、つぐみの幸せな体験を語り始めます。

扉は開けたままで

大学生の佐々木は、文学教授の瀬川を憎んでいます。彼は単位不足で必死に頼み込むも、瀬川は全く聞き入れません。失意の佐々木は、同じ大学の人妻奈緒との禁断の関係に溺れます。しかし、瀬川が文学賞を受賞したニュースを見て再び憎悪が募ります。佐々木は奈緒を使って瀬川に迫り、彼を引きずり下ろそうと企てます。奈緒は瀬川に近づき、自らのファンだと告げ、朗読の場で思わぬ緊張感が生まれます。

もう一度

2019年、大規模なコンピュータウイルスが世界を混乱に陥れました。そんな中、夏子は故郷・仙台での同窓会に参加します。20年ぶりの再会は、かつての友人たちとの会話が噛み合わず、落胆を覚えさせます。帰ろうとした夏子は、同世代の女とすれ違い、驚いて声を掛けます。彼女も同窓会には招待されていないことを知り、家で再会することに。しかし、二人は昔の思い出を語り合う中で、微妙なズレを感じ始めます。

評価

本作は多くの映画批評サイトや雑誌で高評価を得ています。イギリスの『SIGHT & SOUND』が選ぶ2021年のベスト映画50本の第10位、アメリカの『FILM COMMENT』では第7位、さらに『ROLLING STONES』では第4位にランクインするなど、国際的にも評価されています。映画批評サイト『IndieWire』でも、第17位にランクインしました。

まとめ

『偶然と想像』は、濱口竜介監督の才能が存分に発揮された作品であり、一つ一つの短編が深い洞察を持ったストーリー展開を見せています。人物の関係性や心理の奥深さを、抑制された演技で描き出し、観る者に考えさせる要素が満載です。

もう一度検索