偽クレーター

偽クレーター（根なしコーン）とは

偽クレーター（英語：pseudocrater）は、一見すると本物の火口のように見える火山地形ですが、実際には溶岩の噴出口ではないという点で異なります。地下のマグマ溜まりに繋がる火道を持たないため、「根なしコーン（rootless cones）」とも呼ばれます。

偽クレーターの形成過程

偽クレーターは、高温の溶岩流が湿地帯、湖、池などの水分の多い地表を通過する際に発生する水蒸気爆発によって形成されます。溶岩と水が接触すると、地下水が急速に加熱されて水蒸気爆発が発生します。この爆発によって溶岩表面が破壊され、火山灰などのテフラが放出されます。放出されたテフラが堆積することで、本物の火口と非常によく似たクレーター状の地形が形成されます。

偽クレーターの分布

偽クレーターは、溶岩流と水が相互作用しやすい環境でよく見られます。特に有名な場所としては、アイスランドが挙げられます。ミーヴァトン湖周辺（Skútustaðagígar）には多数の偽クレーターが存在し、レイキャヴィク地域（Rauðhólar）やアイスランド南東部（Landbrotshólar）にも分布しています。

また、偽クレーターは地球上だけでなく、火星のアサバスカ渓谷でも発見されています。火星の偽クレーターは、溶岩流が地中の氷を過熱し、水蒸気爆発を引き起こしたことによって形成されたと考えられています。

観測事例

2010年3月、エイヤフィヤトラヨークトルの最初の噴火に伴う水蒸気爆発の際、火山学者は史上初めて偽クレーターの形成過程を直接観測することに成功しました。この観測は、偽クレーターの形成メカニズムを理解する上で非常に貴重なデータとなりました。

偽クレーターと類似地形

偽クレーターと類似した地形としては、ホーニトやマールなどが挙げられます。ホーニトは、溶岩トンネルの崩壊によって形成される陥没地形であり、マールは、地下水とマグマが接触することによって発生する水蒸気爆発によって形成される火口です。これらの地形は、偽クレーターと同様に火山活動によって形成されますが、形成メカニズムや形状が異なります。

まとめ

偽クレーターは、溶岩流と水蒸気爆発という自然現象が生み出す独特な地形です。アイスランドや火星など、特定の環境下でのみ見られる貴重な存在であり、地球や惑星の火山活動を理解するための重要な手がかりとなります。

参考文献

Pseudocraters and Mars (PDF file)
Cones and Inflated Lava Flows on Mars

関連項目

アイスランドの火山活動
火星の岩石の一覧
ホーニト
マール (火山)

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