傅培梅

傅 培梅（フー・ペイメイ）

傅培梅（1931年 - 2004年）は、台湾の食文化に多大な影響を与えた著名な料理研究家です。長年にわたりテレビの料理番組に出演し、特に台湾の多くの家庭で親しまれました。その人気は非常に高く、彼女が番組で紹介した食材が市場で売り切れるほどの社会現象を巻き起こすこともありました。

料理研究家としての活動に加え、台湾の人気食品メーカーである統一企業が製造販売するカップラーメンシリーズ「満漢大餐」の開発にも関わりました。また、日本企業が台湾に進出する際のサポートを行うなど、食を通じた国際的な交流にも貢献しています。

生涯とキャリア

1931年、現在の中国遼寧省大連市で生まれた傅培梅は、幼少期に日本語教育を受けたため、日本語での会話も可能でした。1949年に台湾へ移住し、1961年から自宅で料理教室を開講します。翌1962年、台湾でテレビ放送が開始されると同時に、台湾電視公司の料理番組の担当となりました。

彼女の活動範囲は台湾国内にとどまらず、1970年代から1980年代にかけては、アジア各国、オーストラリア、南アフリカ、アメリカ、オランダなど、世界各地を歴訪して中華料理の指導を行いました。特に日本では、1978年から1983年までフジテレビの料理番組『奥さまクッキング』に出演し、日本の視聴者にも中華料理の魅力を伝えました。フィリピンでは彼女の音声がタガログ語に吹き替えられた料理番組が放送されるなど、国際的な影響力を持つ料理研究家でした。

料理本『培梅食譜』

傅培梅は、自身の料理教室やテレビでの経験を基にした料理本『培梅食譜』を1969年、1974年、1979年に出版しています。特に1969年版は、中華料理を東、西、南、北の四大体系に分類して解説した、この種の分類を行った初期の料理本の一つとして特筆されます。彼女自身は、この分類がインテリ層には単純すぎると映るかもしれないとしつつも、外国人読者が中国各地の料理の違いを理解するのに役立つ方法だと説明しています。

1969年版には、家庭で作るには難しい北京ダックや、アメリカで生まれた中華料理であるチャプスイなども含まれていました。これは当時の台湾（中華民国）が国際的な影響力を持ち、中華料理を中華民国の文化として積極的に世界に発信していた時代背景を反映しています。しかし、1971年の国連総会での決議を経て台湾の国際的地位が変化した後に出版された1974年版、1979年版では、政治的な記述が大幅に削減され、中華料理の文化的な側面を強調する内容へと変化しました。これらの版では、台湾を中国全土の料理が味わえる場所として提示すると共に、福建料理や湖南料理と並んで、台湾料理を独自の地方料理体系として位置づけています。台湾が中華料理の正統な伝統を保持しているという考えは、当時の国民党の主張とも一致する、一般的なものでした。

後世への影響と作品

傅培梅の活躍以降、1990年代には阿基師のような後進の料理研究家が登場し、テレビ番組や料理本で人気を博し、台湾料理界の新たな世代を担うようになりました。

傅培梅はまた、その波乱に満ちた生涯が人々の関心を集め、様々な作品の題材となっています。自伝小説『五味八珍的歲月』は、彼女の人生を描いたもので、これを原作とした同名のテレビドラマが台湾電視公司で2017年に放映されました。このドラマでは女優のアンバー・アンが傅培梅を演じ、Netflixでも配信されました。また、同名のコミカライズ作品も出版されています。

彼女の長女である程安琪も女優として活動した後、母親と同じく料理研究家となり、傅培梅の料理番組『傅培梅時間』では、彼女が亡くなるまで司会として共に番組を支えました。

傅培梅は、単なる料理研究家にとどまらず、テレビというメディアを通じて多くの人々に食の楽しみと知識を届け、台湾の食文化の発展に貢献した偉大な人物と言えるでしょう。

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