傾城の恋:激動の時代を生きる男女の愛の物語
1984年公開の香港
映画『傾城之恋』(原題:傾城之戀、英題:Love in a Fallen City)は、1940年の香港を舞台に、運命に翻弄される男女の切ない恋愛を描いた作品です。張愛玲の同名小説を
映画化した本作は、ビデオでは『ラスト・ラブ 傾城の恋』、DVDでは『傾城の恋』という邦題でリリースされました。
物語の中心人物は、大家族の中で孤独を抱えるバツイチの女性、スーです。彼女は、異母妹のお見合いの席で、イギリス育ちの青年実業家ファンと出会います。ファンに惹かれたスーは、彼との結婚を望み、新たな人生を歩もうと決意します。
前半は、スーの複雑な家庭環境と、ファンとの恋愛模様が丁寧に描かれています。スーは、自身の安定した未来を願ってファンへの愛情を確かめようとし、ファンはそんなスーの心情を理解しつつも、彼女への想いを試すかのような駆け引きを展開します。2人の間には、微妙な駆け引きと、惹かれ合う感情が複雑に絡み合っています。
しかし、幸せな時間は長くは続きません。ファンが仕事で香港を離れた直後、太平洋戦争が勃発。香港は日本の攻撃を受け、激しい戦火に包まれます。街は破壊され、人々は混乱に陥ります。そんな状況の中、ファンはスーを迎えに香港へ戻ってきます。
戦火によって故郷を奪われ、すべてを失いかけた2人。しかし、同時に、2人にとってはお互いが唯一の心の拠り所となっていることに気づきます。崩壊した街の中で、2人は互いの存在の大切さを痛感し、結婚という形で結ばれるのです。
アン・ホイ監督による繊細な演出、
チョウ・ユンファとコラ・ミャオによる見事な演技、そして1940年代の香港を再現した美しい映像が、この物語に深みを与えています。時代背景と絡み合う、美しくも切ない恋愛物語は、観る者の心を深く揺さぶります。
キャスト
ファン:
チョウ・ユンファ (周潤發)
スー:コラ・ミャオ (繆騫人)
スーの兄:ケン・チュンピン (秦沛)
スーの2番目の義姉:チュ・カオ (朱凱廸)
徐夫人:ヘレン・マ (馬斯晨)
ロー:チン・ワイイー (秦偉)
徐:チョン・ギンファイ (鄭君熾)
スーの2番目の兄:ガム・チュン (甘 超)
ルイーズ:エレイン・チン (鄭佩佩)
スーの義姉:イー・チンイー (伊 倩儀)
スタッフ
監督:アン・ホイ (許鞍華)
製作総指揮:モナ・フォン (方逸華)
製作:ローレンス・ウォン (黃百鳴)
原作:アイリーン・チャン (張愛玲)
脚本:パン・ツォ (潘 源)
撮影:アンソニー・ホープ (Anthony Hope)
音楽:ヴァイオレット・ラム (ラム・フォン)
美術:ロク・イーリン (陸 詒琳)
* 編集:ケン・ヒンルン、チョウ・チョンカン、フォン・ボーワー
この
映画は、単なる恋愛
映画にとどまらず、激動の時代を生き抜く人間の強さと、愛の尊さを描いた作品です。歴史的背景と絡み合ったドラマティックな展開、そして繊細な人間描写は、観る者に深い感動を与えてくれるでしょう。