傾性

傾性（けいせい）とは

傾性とは、植物が外部からの刺激の方向に関わらず、一定の方向に屈曲する現象を指します。この現象は、植物が環境の変化に対応して成長や形態を変化させるための重要なメカニズムの一つです。

傾性の特徴

刺激の方向との無関係性: 傾性の最大の特徴は、植物の屈曲方向が外部からの刺激の方向と直接的な関係を持たない点です。例えば、光の方向に向かって曲がる屈光性とは異なり、傾性は光の方向とは無関係に特定の方向に曲がります。
成長運動と膨圧運動: 傾性のメカニズムには、成長を伴う成長運動と、細胞の膨圧変化による膨圧運動の2種類があります。成長運動による傾性では、細胞の成長速度の違いによって茎や葉が曲がります。一方、膨圧運動による傾性では、細胞内の水分量の変化によって屈曲が起こります。

傾性の種類

傾性には、様々な種類があり、それぞれ異なる刺激やメカニズムによって引き起こされます。主な種類としては、以下のようなものがあります。

光傾性: 光の刺激によって引き起こされる傾性です。ただし、この場合の屈曲方向は光の方向とは必ずしも一致しません。植物は、光の強度や波長に応じて一定の方向に曲がることがあります。
温度傾性: 温度の変化によって引き起こされる傾性です。植物は、温度が高くなったり低くなったりする変化に対して、一定の方向に曲がることがあります。
接触傾性: 接触刺激によって引き起こされる傾性です。例えば、ツル植物が支柱に巻き付く際に、接触刺激に応じて一定の方向に曲がります。
就眠運動: 光の強弱や温度変化に応じて、葉や花が一定の方向に開いたり閉じたりする運動です。これは、傾性の一種と見なされることがあります。

傾性と屈性の違い

傾性と混同されやすい現象に屈性がありますが、両者には明確な違いがあります。

屈性: 屈性は、植物が外部からの刺激の方向に屈曲する現象です。例えば、光の方向に向かって曲がる屈光性や、重力の方向に向かって曲がる屈地性などが挙げられます。
傾性: 傾性は、刺激の方向とは無関係に、一定の方向に屈曲する現象です。

傾性の例

植物が一定の方向に傾いて成長する様子
ツル植物が支柱に巻き付く際の運動
葉が光の強弱に応じて特定の角度に開閉する運動

傾性の研究

傾性のメカニズムは、植物の成長や形態形成において重要な役割を果たしているため、植物生理学や植物発生学において重要な研究テーマとなっています。近年では、分子生物学的なアプローチにより、傾性に関わる遺伝子やタンパク質の研究が進んでいます。

まとめ

傾性は、植物が環境変化に対応するための重要な運動の一つです。刺激の方向とは無関係に一定の方向に屈曲する点が特徴であり、成長運動や膨圧運動など、多様なメカニズムによって引き起こされます。傾性の研究は、植物の環境適応能力を理解する上で不可欠であり、農業や園芸などの分野にも応用されています。

関連項目

就眠運動
接触傾性運動
植物の運動力 - チャールズ・ダーウィンが著した動く植物について書かれた本
en:Template:Tropism

外部リンク

傾性 - コトバンク

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