就眠運動

就眠運動（Nyctinasty）とは

就眠運動とは、植物が示す特有の運動であり、夜間には葉を閉じ、日中には葉を開くという周期的な変化を指します。この現象は、まるで植物が眠っているかのように見えることから、「睡眠運動」とも呼ばれます。

就眠運動のメカニズム

就眠運動は、植物の種類によって異なるメカニズムで発生します。

膨圧運動: カタバミやマメ科植物では、葉の付け根にある葉枕（ようちん）と呼ばれる部分の細胞の膨圧変化によって葉の開閉が行われます。細胞内の水分の移動によって細胞が膨らんだり縮んだりすることで、葉が動きます。
成長率の変化: キク科植物などでは、葉の成長速度の違いによって就眠運動が起こります。葉の表側と裏側の成長速度が異なることで、葉が曲がり、開閉運動が生じます。

就眠運動の歴史

就眠運動に関する記録は古く、アレクサンダー大王の部下であったアンドロステネスが、タマリンドの葉の開閉について言及したとされています。また、18世紀には、植物の就眠運動の研究から生物時計（概日リズム）が発見され、生物が持つ時間感覚の理解が進みました。

就眠運動を制御する物質

植物の就眠運動は、特定の物質によって制御されていることが分かっています。

就眠物質:

K-PLF1
ポタシウムチェリドネート
フィランツリノラクトン
トリゴネリン
D-イダル酸ジカリウム

これらの物質は、葉を閉じる方向に作用すると考えられています。

覚醒物質:

ポタシウムレスペデザート
cis-p-クマロイルアグマチン

これらの物質は、葉を開く方向に作用すると考えられています。

これらの物質の働きによって、植物は昼夜のリズムに合わせた葉の開閉運動を行っていると考えられます。

就眠運動の研究の重要性

就眠運動の研究は、植物の生理的なメカニズムを解明するだけでなく、生物時計の研究にも大きく貢献しています。生物時計は、生物が持つ体内時計であり、睡眠、ホルモン分泌、代謝など様々な生理現象を制御しています。

関連事項

傾性: 植物の成長や運動の方向が、光や重力などの外部刺激によって決定される現象です。就眠運動とは異なり、外部からの刺激に対する応答として生じます。
Circadian Clock Associated 1(CCA1): 植物の生物時計に関連する遺伝子の一つです。植物の概日リズムを制御する重要な役割を果たしています。
Late Elongated Hypocotyl (LHY): CCA1とともに、植物の概日リズムを制御する遺伝子です。
* リンネの花時計: 18世紀の植物学者カール・フォン・リンネが提唱した、開花時間の異なる植物を組み合わせて時間を示す庭園のことです。植物の周期的な変化を利用した興味深いアイデアです。

就眠運動は、植物の生命活動の奥深さを教えてくれる興味深い現象です。今後の研究によって、就眠運動のメカニズムや、生物時計との関係がさらに解明されることが期待されます。

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