僕が星になるまえに

『僕が星になるまえに』：友情と人生の意味を問う感動のロードムービー

2010年、イギリスで製作された『僕が星になるまえに』（原題：Third Star）は、若き才能たちが織りなす感動的なドラマ映画です。ベネディクト・カンバーバッチの映画デビュー作としても注目を集め、2013年には日本でも公開されました。監督はハッティー・ダルトン、これは彼女にとって初の長編映画作品となります。

物語の中心となるのは、29歳の誕生日を迎えながらも、末期のがんを患っているジェームズです。余命いくばくもない彼には、どうしても叶えたい願いがありました。それは、彼が「世界で一番好きな場所」と呼ぶウェールズのバラファンドル湾を訪れること。彼は親友であるデイヴィー、ビル、マイルズを誘い、命の期限が迫る中で、忘れられない旅へと出発します。

ジェームズは既に体力が衰え、自由に動くことさえ困難な状態でした。しかし、親友たちは彼をカートに乗せ、男4人だけの旅を支えます。美しいウェールズの風景の中を進む旅は、順風満帆ではありませんでした。道中にはトラブルや意見の衝突も起こります。しかし、それらの出来事を通して、4人はそれぞれが抱える悩みや、心の奥底にある本音を露わにしていきます。

目的地であるバラファンドル湾が近づくにつれて、ジェームズの病状は悪化していきます。彼は激しい痛みと戦いながらも、旅を続けようとします。実は、この旅にはジェームズが友人に隠していた真の目的がありました。それは、バラファンドル湾で泳ぎ、そこで最期を迎えることだったのです。

ジェームズはついに、友人にその願いを打ち明けます。彼は彼らに、自分を見送ってほしいと頼みました。当然のことながら、友人はこの願いに激しく反対します。しかし、ジェームズの苦しむ姿を見て、3人は彼の決意を受け入れることを決断します。

ジェームズは海に向かって泳ぎ始めます。友人も彼を追いかけますが、泳ぎの苦手なデイヴィーはビルに助けられ岸に戻ります。ジェームズはマイルズに改めて別れを告げ、静かに海に沈んでいきます。マイルズはジェームズを助けようともしますが、彼の意思を尊重し見送ることを選びました。

最後に残されたのは、ジェームズの亡骸を抱えたマイルズと、岸辺で彼を見送る2人の親友。彼らの表情は、深い悲しみと、かけがえのない友情を失った喪失感に満ちていました。

この映画は、ベネディクト・カンバーバッチの鮮烈な映画デビュー作であるだけでなく、人生の有限さ、友情の大切さ、そして死と向き合うことの尊さを静かに、しかし力強く描き出しています。美しいウェールズの自然と、俳優たちの繊細な演技が、観る者の心に深い感動を与えてくれる作品です。

映画公開後には、日本語吹き替え版を担当した三上哲氏によるトークイベントも開催され、多くのファンを魅了しました。2013年12月20日には、英語音声、日本語字幕付きのDVDも発売されています。エディンバラ映画祭出品という事実は、この映画の芸術的な価値の高さを示しています。

『僕が星になるまえに』は、単なる物語ではなく、人生と死、そして友情について深く考えさせられる、忘れがたい作品です。

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