僕は沖縄を取り戻したい 異色の外交官・千葉一夫

僕は沖縄を取り戻したい 異色の外交官・千葉一夫

『僕は沖縄を取り戻したい 異色の外交官・千葉一夫』は、2017年8月3日に岩波書店から刊行された、NHK報道局のチーフディレクター、宮川徹志によるノンフィクションです。この書は、沖縄返還交渉における外務省北米第一課長、千葉一夫の人生と功績を、関係者へのインタビューと豊富な文献に基づいて描いています。文中で描かれる千葉の姿勢や外交活動は、一般的な官僚とは一線を画し、特異な個性が際立ちます。

執筆の動機と背景

宮川氏は、2010年に外務省の「密約」問題に関する取材を行っていた際に、沖縄返還に関連するさまざまな外交文書を見つけ、その中に千葉一夫の手書き文書が多数存在していることに気づきました。彼の文書は、一般的な官僚のものとは異なり、独特の雰囲気を持っていたため、著者は強い興味を抱きました。その後、元首相佐藤栄作の秘書が残した文書にも千葉の名前が頻出することに気づき、さらに彼について知りたいと思うようになります。

この興味を持った著者は、千葉の妻と会い、彼がポツダム宣言の際に亡くなった父を持ち、また広島の原爆を経験したことなど、様々なエピソードを聞き出しました。これにより、「強烈な戦争体験をした千葉が、沖縄返還交渉にどのように臨んだのか」という疑問に強い関心を抱き、この書の執筆へとつながります。

映像化の過程

『僕は沖縄を取り戻したい』は、テレビドラマ『返還交渉人 -いつか、沖縄を取り戻す-』の原案にもなりました。このドラマは2017年8月12日にNHK BSプレミアムで放送され、主演の井浦新をはじめ、多くの俳優が参加しました。また、ドラマは再編集され、2018年6月30日には劇場公開されました。映画版では、未使用の素材が追加され、千葉一夫の人柄や外交活動がより深く描かれています。

演出を手がけた柳川強氏は、撮影中に「この作品が多くの人の目に触れないまま終わってしまうのはもったいない」との思いから、劇場公開を決定しました。これにより、千葉の物語はより多くの観客に伝わり、彼の功績が再認識されることとなります。

結論

著者の宮川氏は、「千葉一夫は日本の外交史に名を残す人物であり、あまり知られていない外交官として、この機会に再評価されるべき」と語っています。彼の外交活動や人柄について、さらに触れられることで、沖縄の歴史やその重要性にも思いを馳せる機会となることを願っています。

この書とその派生映像作品は、沖縄返還に関する重要な資料として、また千葉一夫の人生を知る手段として、多くの人々に影響を与えることでしょう。

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