優先順位付投票制

優先順位付投票制（IRV）

優先順位付投票制、またはIRV（Instant Runoff Voting）は、有権者が候補者に対して順位をつけて投票することで、選挙結果を迅速かつ効率的に決定できる手法です。この制度は、初回投票と決選投票の機能を一回の投票にまとめ上げることを目的としています。IRVは米国では「ranked choice voting（RCV）」と呼ばれることが多く、イギリスやカナダなどでも様々な名称で知られています。

IRVの運用方法

IRVは、議会選挙や市長選挙などの単一選出の選挙で特に効果的です。投票者は、候補者を自らの最優先順位に従ってランク付けし、過半数を獲得するまで、落選した候補者の票を次に順位付けされた候補者に移譲するシステムです。これにより、候補者が複数いる状況でも、票割れが発生するリスクを軽減でき、調整を行う必要がなくなります。

この選挙制度の利点の一つは、無駄な投票を減らすことができ、真に有権者が望む候補者に支持を集中できる点です。また、エクスハウスティブ・バロットに似たプロセスを使用しながらも、一回の投票で結果を得られるため、手間が削減されます。

一方で、IRVの欠点としては、当選者の決定方法が複雑であることが指摘されています。特に過半数を得るためのプロセスが繰り返されるため、結果が不透明になることがあります。

世界の導入例

IRVは、オーストラリアやアイルランド、フィジーなどで正式に用いられており、さらにアメリカのサンフランシスコやミネアポリスなどでも採用されています。また、映画業界などでもその選考プロセスにおいて導入されることがあります。ニューヨーク市長選挙でも2021年にこの制度が適用され、多くの国や地域で試行されています。

イギリスの導入の試み

2010年にはイギリスの政府が選挙制度の見直しを検討し、IRVの導入を目指す国民投票を行いましたが、結果的には67.9%もの反対票が集まり、導入が否決されました。このように、システムに対する疑問や不安が根強いことも事実です。

実際の投票例

具体的な選挙の例を挙げると、3名の候補者が立候補した場合、投票者はそれぞれに優先順位をつけます。もし第一ラウンドで過半数を獲得する候補者が出なければ、得票数の最も少ない候補が落選し、その票が次の順位の候補に移されるのです。このプロセスは、最終的に過半数を獲得するまで続き、時には第3位以下からの逆転勝利が起こることもあります。

逆転勝利の可能性があることで、最初から候補者の結果を複雑にすることがない一方、実際には当初の順位が最終結果に影響を与えることが多いです。このようにIRVではダイナミックな選挙結果が期待されるため、今後も様々な場面での応用が期待されています。

問題点

ただし、IRVには「ロバ投票」と呼ばれる現象も存在します。これは、投票者が単調に順位をつける行為で、無関心を表す手段となることがあります。義務投票制度を採用している国では、このような投票行為が頻繁に発生し得るため、IRVの導入には慎重さが求められます。

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