元均

元均（ウォン・ギュン、1540年2月12日 - 1597年8月2日）は、16世紀後半、李氏朝鮮の時代に活躍した武将です。特に日本による朝鮮出兵である文禄・慶長の役（朝鮮側では壬辰・丁酉倭乱と呼びます）において、朝鮮水軍の指揮官として知られています。本貫は原州元氏。

武官としての経歴

元均は1567年に武官登用試験である武科に合格し、官職に就きました。当初は宣伝官（宮廷の儀礼などを司る武官）を務め、その後、李鎰（イ・イル）とともに北方の咸鏡道（ハムギョンド）へ派遣され、造山堡（チョサンボ）の万戸（マンホ、地方の武官職）を務めました。1583年には、国境を脅かす女真族の討伐に参加しましたが、この際に特筆すべき功績を挙げたわけではないにも関わらず、その後何らかの理由で富寧府使（プニョンブサ、地方長官職）に異例の昇進を果たしています。元均は、その勇猛な性格で知られており、朝鮮王朝の歴史書『宣祖実録』にもその点について特別に言及されるほどでした。

文禄の役での活動

文禄の役が始まるおよそ2ヶ月前の1592年2月、元均は慶尚右道水軍節度使（キョンサンうどうすいぐんせつどし）に任命され、朝鮮水軍の司令官職の一つに就きました。同年4月に日本軍が大挙して朝鮮半島に押し寄せた際、元均は当初、戦闘を避け艦隊を放棄して陸地に逃れたとされています。しかしその後は、全羅左道水軍節度使（チョルラさどうすいぐんせつどし）であった李舜臣（イ・スンシン）や全羅右道水軍節度使の李億祺（イ・オッキ）ら他の水軍指揮官たちと共に、日本水軍との戦闘に参加しました。しかし、元均の猪突猛進ともいえる性格と、学者肌の一面も持つ李舜臣とは、互いに性格が合わない面があったと伝えられています。李舜臣は、自身の日記である『乱中日記（ナンジュンニッキ）』の中で元均を「天と地の間にはこの元均のように凶悪で常軌を逸した人はいないだろう」と記すなど、非常に厳しい言葉で非難しています。

慶長の役での大敗と最期

1597年、慶長の役が勃発する頃、李舜臣が讒言（事実無根の中傷）によって官職を追われると、元均はその後任として三道水軍統制使（さんどうすいぐんとうせいし）に任命され、朝鮮水軍全体の指揮権を掌握しました。しかし同年7月、巨済島（コジェド）沖の漆川梁（チルチョンニャン）で行われた海戦（漆川梁海戦）において、藤堂高虎（とうどうたかとら）らが率いる日本水軍の攻撃を受け、朝鮮水軍は壊滅的な大敗を喫しました。この戦いで元均は行方不明となり、公式には戦死したものとして扱われましたが、一部には生存説も存在します。

没後の追叙と歴史的評価

元均は死後、従一品相当の左賛成（チャチャンソン）に追叙され、原陵君（ウォルルングン）に追封されました。しかし、その気性の荒さから部下にも厳しく接したことや、李舜臣を陥れるための讒言に関わったとされる疑惑など、同時代や後世の文献において手厳しく批判的に記述されているため、国民的英雄として崇められる李舜臣に比べ、現代における評価は著しく低い傾向にあります。一方で、元均は宣祖（ソンジョ）王によって文禄・慶長の役の功臣（宣武一等功臣）に叙せられた人物であり、近年韓国では、こうした功臣としての側面にも注目し、その歴史的評価を再検討・再評価しようとする動きも見られます。

慶長の役直後、壊滅した水軍の再建に際して、元均が三道水軍統制使を務めていた時期の他の主要な水軍指揮官には、慶尚右道水軍節度使の裴楔（ペ・ソル）、全羅右道水軍節度使の李億祺、忠清道水軍節度使の崔湖（チェ・ホ）らがいました。

関連作品

2022年に公開された韓国映画『ハンサン -龍の出現-』（閑山島海戦を描く）では、俳優のソン・ヒョンジュが元均を演じています。

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