元屋敷陶器窯跡

元屋敷陶器窯跡

元屋敷陶器窯跡（もとやしきとうきかまあと）は、岐阜県土岐市の久尻地区に位置し、江戸時代初期に建てられた陶器窯の遺跡です。この遺跡は岐阜県内で最も古い連房式登窯として知られ、国の史跡にも指定されています。

発掘と概要

ふり返ると1958年（昭和33年）に行われた発掘調査によって、ここで連房式登窯1基と大窯3基が発見されました。その中でも特に連房式登窯は、江戸時代初期に美濃の陶祖と伝えられる加藤景延によって築かれたとされています。景延は朝鮮半島から伝わった登り窯の技法を唐津で学び、久尻の地にこの窯を構えたと伝承されています。

この連房式登窯は「元屋敷窯」と名付けられ、その規模は奥行きが約24メートル、幅は平均2.2メートルで、14の焼成室と燃焼室を兼ね備えています。特に燃焼室と焼成室の間には70センチメートルの昇焔壁が設置されていることが確認されています。焼成室のサイズは窯の上部に向かうにつれて大きくなり、焼成室間には火が通るための6から7個のサマ穴という構造が施されています。残念ながら、窯の天井は崩れ落ちており、現在は床面と壁の一部分がかろうじて残っています。2019年（令和元年）時点では、この窯跡は露出した状態で、覆屋により保護が施されています。

出土品とその重要性

この窯跡からは、黒織部や青織部、赤織部、志野織部、美濃伊賀、美濃唐津、黄瀬戸など、多種多様な美濃焼の出土品が発見されています。特にこれらの出土品は、当時の陶器生産や技術の理解において非常に重要な資料です。

大窯は「元屋敷東1-3号窯」と呼ばれ、元屋敷窯に先行して築かれていました。1号窯は安土桃山時代に建立され、天目茶碗や皿、すり鉢などが生産されていました。また、窯の規模は時代と共に縮小し、最終的には幅が3.0メートルにまで減少し、織部焼や志野焼が生産されるようになりました。2号窯は全長7.5メートル、幅3.9メートルの大きさで、1号窯と同様に天目茶碗などから美濃焼に転換される過程が見られました。3号窯は小型化したもので、幅が2.9メートルとなり、雨水が入らないように溝が設けられました。

陶器窯の周辺では、作業場や物原も発見されており、美濃焼き最初期の生産現場を理解するうえで大きな意義があります。1968年（昭和42年）には、国の史跡として正式に指定されました。

出土品の保存と文化財指定

1931年（昭和6年）には多治見工業学校が発掘を行い、その出土品は同校で保管されています。その後、美濃陶祖奉賛会による1949年（昭和24年）の発掘や、土岐市教育委員会による1993年から2001年にかけての追加調査により出土した品々が合わさり、これらは「岐阜県元屋敷陶器窯跡出土品」として、2013年（平成25年）に重要文化財に指定されています。

元屋敷陶器窯跡は、歴史的な価値のみならず、陶器生産の技術や文化の理解を深める上でも非常に重要なスポットであり、これからも多くの人々にその魅力を伝えていくことでしょう。

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