天目茶碗

天目茶碗について

天目茶碗（てんもくぢゃわん）は、中国の天目山地域で使用されていた陶器製の茶道具です。この茶碗は鉄分を用いた天目釉で焼かれ、独特の美しい黒色が特徴です。元々、茶葉の産地として知られるこの地域には、多くの寺院が存在していたため、茶道具の制作も盛んに行われていました。

製造の歴史

天目茶碗の制作に使用される釉薬は、長石、石灰岩、鉄イオンを含んでいます。この鉄釉を用いて焼かれた陶磁器は、周の時代にさかのぼることができますが、特に本格的な製造が行われたのは東晋の時期で、浙江省の徳清窯が有名です。他のスタイルの陶器、例えば白磁や青磁とは異なり、天目茶碗は酸化焼成または還元焼成のいずれでも同様の外観を持つため、製造が簡便でした。そのため、多くの場所で日常用の陶器として用いられてきました。

宋代以降、特に白茶の流行とともに、鉄釉を施した文様付きの茶碗は茶人たちに重宝されるようになります。天目茶碗に関する最古の文献は、北宋時代の官僚陶穀によるもので、彼は『清異録』に建窯産の茶碗について記述しています。

日本への伝播

日本では、鎌倉時代に禅宗が栄え、特に中国禅宗の中心であった天目山から和尚たちが茶の文化を持ち帰りました。室町時代には、足利義政の時代に灰被天目や黄天目と呼ばれる茶碗が登場します。これがさらに進化し、鉄釉を施した茶碗は「天目」として広まりました。特に、鼈口を有した二段の口造り構造の天目茶碗は、茶の保温に優れることから、茶道を愛する人々によく好まれました。このような茶碗は、台子点前や貴人点など重要な茶会でも用いられるようになりました。

色合いの違い

天目茶碗の釉薬は、鉄分の含有率によって色合いが異なります。鉄分が1%から2%で青磁が、15%を超えると黒磁に分類されます。そのため、含有する鉄分の量で様々な色合いが生まれ、高い含有のものは「柿釉」、少ないものは「飴釉」と呼ばれています。

種類

現在、天目茶碗には多くの種類がありますが、代表的なものには福建省南平市建陽区の建盞（けんさん）、江西省の吉州窯で作られた玳皮盞（たいひさん）や鼈盞（べつさん）などがあります。特に、建盞からは「曜変天目」「油滴天目」「灰被天目」「禾目天目」など多様なスタイルが派生し、吉州窯からは「木葉天目」「文字天目」「鸞天目」が知られています。

特に貴重とされる「曜変天目」は、現在全世界で数点しか存在せず、国宝として指定されたものも含まれています。他にも、華北の「河南天目」や朝鮮の「高麗天目」、日本の「菊花天目」なども名高いです。美濃焼では、白い釉薬で仕上げたものが「白天目」と呼ばれています。

まとめ

このように、天目茶碗はその美しさと歴史的価値により、茶道具として重宝され続けています。日本における茶文化が栄えた背景には、天目茶碗をはじめとする陶器の存在が大きく影響しています。

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