元旦競歩

元旦競歩（がんたんきょうほ）

元旦競歩は、その名の通り毎年1月1日の元旦に、日本の首都である東京都で開催される陸上競技、特に競歩を専門とする大会です。この大会は、現存する日本の競歩競技会の中で最も長い歴史を誇る伝統あるイベントとして知られています。

概要と歴史

この大会は、1953年に競歩を愛好する人々が、新年の初めに皆で歩き始めようという趣旨で始めた、ささやかな集まりが起源とされています。その後、規模と認知度を高め、1959年に開催された第7回大会からは、日本陸上競技連盟の公認を得る競技会へと発展しました。

元旦競歩は、特に日本競歩界の登竜門的な大会としての地位を確立してきました。過去には、この大会で好成績を収めた多くの選手が、後に日本を代表する選手として世界大会などで活躍しています。これは、新年の早い時期にトップレベルの選手たちが集まり、互いに力を試す場として機能してきた歴史を示しています。

また、この大会は日本の女子競歩の歴史においても重要な役割を果たしました。1981年の第29回大会において、女子5km競歩が種目として導入されましたが、これは国内で開催された公認競技会としては、初めて女子競歩種目が実施された事例となります（これに先立ち、前年の11月には女子競歩の日本記録が公認されています）。

コース

大会のコースは、東京都渋谷区にある神宮外苑、聖徳記念絵画館の周辺に設定された周回コースを使用しています。現在のコースは1周1.350kmの車道コースです。この車道コースは、遡ること1964年の東京オリンピックにおいて、男子20km競歩のコースの一部としても使用されたという歴史を持ちます。かつては、2013年まで歩道を利用した1周1.325kmの周回コースが使用されていました。

参加者と特色

元旦競歩は、かつては多くのトップ選手が正月の恒例行事として参加していましたが、近年は日本陸上競技選手権大会や全日本競歩能美大会といった主要な全国大会が2月、3月と近接して開催されるため、トップレベルの選手のエントリーは減少傾向にあります。

しかし、この大会の大きな特色の一つは、参加にあたって特定の標準記録が設定されていない点です。このため、日本陸上競技連盟の登録選手であれば、年齢やレベルを問わず広く門戸が開かれています。結果として、将来を嘱望される高校生ランナーから、長年競歩に親しみ健康維持や記録更新を目指すベテランのマスターズ選手まで、幅広い層の選手が多数出場し、元旦の神宮外苑を力強く歩く光景が見られます。

各部門の優勝者には、「津田直彦賞」が贈られます。この賞は、本大会の創設に大きく貢献し、さらに日本人として初めて国際競歩審判員の資格を取得した故・津田直彦氏（1999年死去）の功績と尽力を称えるために設けられたものです。

大会運営と公認の背景

公認競技会として開催されるには、コースなどの規定を満たす必要があります。日本陸上競技連盟が主催する一般的な競技会では、競歩コースの周回距離は1周あたり2kmから2.5kmと規定されています。しかし、元旦競歩は東京都陸上競技協会が主催する大会であり、日本陸連主催外の競技会に適用される規定では、1kmから2.5kmの周回距離が認められています。現在の1.350kmというコースはこの範囲内に収まっているため、公認競技会としての開催が認められています。

過去には運営上の問題も発生しています。例えば、2014年の大会においては、運営上のミスにより公式記録の発表が遅れるという事態も発生しましたが、後に無事公表されました。

競技種目（例）

以下は、2011年1月1日に開催された第59回元旦競歩大会兼第73回東京陸上競技選手権競歩大会で実施された競技種目の例です。

大学・一般男子20km競歩
大学・一般女子10km競歩
高校男子10km競歩
高校女子5km競歩
50歳以上男子5km競歩
50歳以上女子5km競歩

元旦競歩は、新年の始まりを競歩で迎えるというユニークな大会として、日本の競歩界において特別な位置を占め続けています。

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